パドル・ギアレビュー

ピックルボール パドルの変わり種・特殊形状 大全|スロート穴・六角形フェイスの狙いをコーチが検証

よしコーチ
Pickleball Lab 代表
2026年6月26日
読了 約7分
4654字
ピックルボール パドルの変わり種・特殊形状 大全|スロート穴・六角形フェイスの狙いをコーチが検証

「あの人のパドル、首のところに穴が空いてたけど…あれって何のため?」——コートでたまに見かける“見たことない形”のパドル、気になりますよね。

よしコーチです。テニス歴15年、2026年にピックルボールに出会い、国内外100本以上のパドルを試打してきました。パドルの形は基本的に「スタンダード・イーロンゲイティド・ワイドボディ」の3タイプで説明できます(基本の3形状はパドルの形状ガイド、近年人気の中間タイプはハイブリッド形状で詳しく解説しています)。

でも市場には、その枠に収まらない変わり種・特殊形状のパドルがいくつかあります。この記事では、スロート(首元)に穴があいたものや六角形フェイスなど、マイナーな形状の「狙い」をメーカー公式の説明をもとに整理します。なるべく断定せず、「メーカーはこう説明しています」という検証ベースでお話ししますね。


まず大前提|パドルの形は意外と自由、でもルールはある

スロート穴・六角形フェイス・エッジレスなど、特殊形状のパドルの特徴を示した図解

特殊形状の話に入る前に、ルール上の枠を押さえておきましょう。USA Pickleball(USAP)の規格では、パドルの寸法は次のように定められています(USAP Equipment Standards Manual)。

  • 長さは最大17インチまで
  • 長さ+幅の合計は最大24インチまで(エッジガード・バットキャップ含む)

逆に言うと、この枠の中なら形そのものへの細かい制限は少ないとされます。だからメーカーは縦横のバランスを変えたり、フェイスの角を落としたり、首元に穴をあけたりと、いろいろな工夫ができるわけです。

ただし注意点が1つ。USAPの規格では打球面(ボールを打つフェイス)に穴・割れ・剥離などがあってはならないとされています。つまりフェイスに穴をあけるのはルール違反。後で出てくる“スロートの穴”が打球面ではなく首元にあるのは、ここが大きな理由なんですね。


1. スロート(首元)に穴のあいた形|空気を通す狙い

最近わりと見かけるようになったのが、ハンドルとフェイスの間(スロート=首元)に穴やカットアウトがあるパドルです。

Engage の Aero(オープンスロート設計)

当社が日本唯一正規代理店を務めるEngage Pickleballにも、首元を開けたモデルがあります。Aero(Evolution Aero)です。形状はイーロンゲイティド(16.5インチ × 7.5インチ)、コア厚16mm、フェイスはRaw T700カーボンファイバーという構成で、首元に「オープンスロート設計(Open Throat Design)」を採用しています(Engage公式)。

Engageはこの設計の狙いを、公式の製品ページで次のように説明しています。

オープンスロート設計がスイングスピードを高め、パドルのフレックスを向上させることで、より大きなスピンとより大きなパワーの両立をもたらす(Engage公式・筆者訳)

ポイントは、Engage自身が「空気抵抗が何%減る」といった数値ではなく、スイングスピードとフレックス(しなり)の向上という形で効果を説明している点です。僕も「空気の通り穴だから空力で速くなる」と言い切りたくなりますが、そこは公式説明の範囲にとどめておくのが誠実だと思います。

なお、このEngage Aeroは当店でも取り扱っています。「変わった形を一本試してみたい」という方は、変わり種・特殊形状のパドル一覧からのぞいてみてください。

スロート穴の“元祖”とされる Selkirk

スロート穴を早くから取り入れたブランドとして知られるのがSelkirkです。同社は研究ライン「Selkirk LABS」のProject 002で首元に穴を採用し、これを「air dynamic throat(エアダイナミック・スロート)」と呼んでいます(Selkirk公式)。

Selkirkがうたう狙いは、公式によると主に次の通りとされます。

  • スイングウェイトの軽減(フェイス面積を犠牲にせず、もともとソリッドだった部分から素材を取り除く)
  • 空気が通り抜けることで抗力を減らし、ヘッドスピードを上げる
  • ネット際での取り回し・反応の速さの向上

一方でSelkirk自身、トレードオフとして「ツイストウェイトが下がることでスイートスポットがやや小さくなる」点にも触れていて、どちらかというと中心で安定して捉えられる上級者向けの尖った設計という位置づけのようです。なお、Selkirkのこうしたスロート穴モデルはUSAP承認済みとされています。首元は本来ボールを打つ面ではないため、打球面の穴とは扱いが分かれる、というわけですね。

補足:Joola・CRBN・Gearbox・Six Zeroなどに「首元の穴」があるかどうかは、今回の調査では確認しきれませんでした。確認できたのはEngageとSelkirkの例です。


2. 六角形・多角形のフェイス|卓球から来た発想

もうひとつの変わり種が、フェイスの輪郭が六角形(多角形)になっているパドルです。

代表例はSTIGAの「Aviox Cybershape Carbon Pro」。STIGAはこれを「ユニークな六角形のサイバーシェイプ(hexagonal Cybershape)」と表現しています(STIGA公式)。厳密な正六角形というより、角を切り落として上部を広く取った多角形に近い形です。

面白いのが、この形状の出自です。もともとは卓球(テーブルテニス)のラケットとして生まれた形で、STIGAは「卓球でこれだけ機能したなら、急成長するピックルボールにも合うはず」と考えて転用した、と説明しています。

STIGAがうたう六角形フェイスの狙いは、公式によると次の通りとされます。

  • 従来型より大きいスイートスポットを確保できる
  • スイートスポットをブレード上部(多くのプレーヤーが実際に当てやすい高い位置)に寄せられる
  • ネット前のディンクやベースラインからのドロップでコントロールしやすい
  • コントロールを失わずにより安定した打球とパワーを両立しやすい

仕様面では、T700カーボンファイバーのフェイス、ハニカムポリマーコア、厚さ16mmという構成で、USAPA(USA Pickleball)承認済みとされています。「角を活かして打球面の有効エリアを上に広げる」という発想は、なかなかユニークですよね。

ちなみに、このSTIGAは2026年から当店でも取り扱いを始めました。ここで紹介した六角形の「Cybershape Carbon Pro」も、当店でお選びいただけます。卓球の名門が手がけるブランドの背景は、STIGAのブランドストーリーにまとめたので、興味がある方はのぞいてみてくださいね。


3. その他の変則形状|エッジレス・特殊グリップなど

ここまでの2つほどメジャーではありませんが、専門メディアでは他にもいくつかの変わり種が紹介されています。裏取りが取れた範囲で、ざっと挙げておきます。

  • エッジレス(縁なし)フェイス:外周ガードをなくして打球に使える面積を少し広げる狙いのタイプ。引き換えに耐久性が下がりやすいとされます。
  • 特殊グリップ(角度付き・ピストルグリップ):握りに角度をつけて手首の負担を減らす狙いのタイプ。フェイスというよりハンドル側の工夫ですが、変わり種感は強めです。
  • ナローヘッド(細い面):フェイスの幅を狭くしたタイプ。静音性を訴求するモデルもあるとされます。

いずれも面白い狙いではありますが、主流とは言い切れない段階です。

なお、「ほぼ丸型」「段付き(ステップ)フェイス」「明確な非対称フェイス」といった形状は、今回は具体的な実在モデルまで確認できなかったため、ここでは断定を避けておきます。


「変わり種は買い?」コーチの見立て

正直にお話しすると、ピックルボールのパドルの特殊形状は“万人向け”ではないというのが僕の見立てです。

スロート穴も六角形フェイスも、メーカーが明確な狙いを持って作ったものではあります。でも、その効果を引き出せるかは、プレーヤー側のレベルやスタイルに左右される印象です。たとえばスロート穴は取り回しの速さと引き換えにスイートスポットがシビアになりがち、とされます。基本にまだ慣れていない段階だと、メリットよりクセの方が気になるかもしれません。

なので僕がおすすめしたいのは、こんな順番です。

  1. まずは基本の3形状で、自分に合う縦横バランスを把握する
  2. パワー寄りかコントロール寄りか、コントロールvsパワーで方向性を決める
  3. そのうえで「もっとこうしたい」という不満がはっきりしてきたら、変わり種を検討する

特殊形状は、基本を押さえた人が“次の一手”として試すと面白いジャンルだと思います。いきなり尖った形を選ぶより、まずは扱いやすい形で土台を作るのが、遠回りに見えて近道です。パドル選びの全体像はパドルの選び方に、フェイス素材の話はRawカーボンの解説にまとめてあるので、あわせてどうぞ。


まとめ|“変な形”には、ちゃんと理由がある

最後にポイントを整理します。

  • パドルの寸法はUSAP規格(長さ17インチ以内・長さ+幅24インチ以内)の枠内なら、形の工夫の余地は大きいとされる
  • スロート(首元)の穴は、Engage(Aero/オープンスロート設計)やSelkirk(air dynamic throat)が採用。狙いはスイングスピード・フレックス・取り回しの向上とメーカーは説明している
  • 打球面の穴はルール違反だが、首元(非打球部)の穴は扱いが別で、承認モデルも存在する
  • 六角形フェイスはSTIGA(Cybershape)が代表例。卓球由来で、スイートスポットを上部に広げる狙いとされる
  • 変わり種は面白いが万人向けではない。まずは基本形状で土台を作るのがおすすめ

「これ、どんな狙いの形だろう?」と思ったら、ぜひメーカー公式の説明をのぞいてみてください。形の裏には、ちゃんと作り手の意図があります。

どの形が自分に合うか迷ったら、LINEで気軽に相談してくださいね。プレースタイルやレベルをうかがって、僕が一緒に考えます。


関連商品

すべてのパドルを見る →


関連記事


References

  1. Engage Pickleball — Aero (Evolution Aero) Product Page
  2. Selkirk — Why Is There a Hole in Selkirk LABS Pickleball Paddles?
  3. STIGA — Cybershape Pickleball
  4. USA Pickleball — Equipment Standards Manual
Author
よしコーチ / Pickleball Lab 代表
元スキー世界大会出場選手・現役テニスコーチ。2026年LAでピックルボールと出会い、国内外100本以上のパドルを試打。Engage Pickleball唯一の日本正規代理店(2026年5月時点)。
よしコーチについて →
Free Consultation
パドル選びで迷ったらLINEで相談

ブログを読んでも「自分にはどれが合う?」と迷うことはよくあります。よしコーチが直接お答えします。

LINE で無料相談