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サードショットドロップの打ち方5ステップ|テニスのスライスとの違いもコーチが解説

よ
よしコーチ
Pickleball Lab 代表
2026年10月2日
読了 約11分
6962字
サードショットドロップの打ち方5ステップ|テニスのスライスとの違いもコーチが解説

柔らかく打っているはずなのに、ドロップがネットに刺さる。かと思えば、ふわっと浮いて上から叩かれる。そんな経験はありませんか?

よしコーチです。テニス歴15年の僕も、2026年にピックルボールを始めてから、このショットにはずいぶん苦労してきました。この記事では、サードショットドロップの打ち方を5ステップに分け、テニスのスライスとの違いや練習ドリルまでまとめます。


サードショットドロップとは?まずは30秒でおさらい

サードショットドロップは、サーブ側が打つ3球目で、ゆるい弧を描いて相手のキッチンに落とす柔らかいショットです。キッチン(ノンボレーゾーン)は、ネットから7フィート(約2.13m)までのエリアで、この中ではノーバウンドで打つことができません。

ピックルボールにはツーバウンドルールがあって、サーブもリターンも一度弾ませてから打ちます。だからサーブ側は、リターンが弾むのを後ろで待つしかありません。そのうちに、リターンを打った相手はキッチンラインまで詰めてきます。3球目を打つ瞬間は、相手はネット前、自分たちはまだコートの後ろ、という形になりやすいんです。

公式ルールの寸法で見ると、キッチンラインからベースラインまでは15フィート(約4.57m)あります。この距離を詰めるまで、ネット前の相手に強く打たれない球が必要です。それがドロップ。相手の足元に柔らかく沈めれば、相手は下から持ち上げるしかなく、強くは打てません。そのすきに前へ出て、両チームがキッチンライン前に並ぶ五分の形に持ち込みます。

「なぜ3球目はドロップが基本なのか」をもっと詳しく知りたい方は3rdショットドロップ完全攻略を、ツーバウンドルールやキッチンのルールから確かめたい方はピックルボールのルール完全ガイドをどうぞ。この記事では「どう打つか」に絞ってお話しします。


サードショットドロップの打ち方【5ステップ】

ステップ1:グリップはコンチネンタル寄りで、ゆるく握る

グリップは、コンチネンタルグリップ寄りがおすすめです。包丁やトンカチ(ハンマー)を握るときのように、親指と人さし指の間にできるV字がグリップの真上に来る握り方で、テニスのスライスやボレーで使うあの握りです。あとの章で「スライスの振り下ろし」を取り上げますが、握りはそのままで、変えるのは振る向きだけです。

この握りだと、パドルの面を自然に少しだけ上向き(開き気味)にできます。フライパンを持つような厚い握り(テニスでいうウエスタン系)だと、フォア(利き手側)で打つときに面が下を向きやすく、ドロップには不向きです。

握る強さは、10段階で3くらい。USA Pickleballの解説でも同じ数字が挙げられていて、「強く握るほど、ボールは遠くへ飛ぶ」とあります。ドロップは力で飛ばすショットではありません。テニスの握りからの切り替え方は、ピックルボールのグリップ完全移行ガイドで詳しく書いています。

ステップ2:ひざを曲げて、低く構える

低い球を柔らかく扱うには、自分も低くなる必要があります。棒立ちのまま手だけでどうにかしようとすると、まずうまくいきません。

ひざをしっかり曲げて腰を落とし、目線も下げます。テニスで低いスライスを拾うときの、沈み込む感覚に近いです。

ステップ3:パドルを先に下ろして、下から前へ運ぶ

打つ瞬間のキーワードは、「打つ」ではなく「運ぶ」です。

パドルを先にボールより低い位置へ下ろし、面をやや上向きにしたまま、ボールを下から前へそっと送り出します。肩を支点に、腕とパドルをひとかたまりにして、振り子のように小さく前へ動かしてください。手首やひじでこねないこと。力を入れて固めなくても、面の角度さえ保てれば十分です。

打点は体の前。横や後ろで打つと面の向きが安定せず、ボールが暴れます。

どの角度で送り出せばいいかは、研究でも示されています。2026年にスポーツ科学の査読付き学術誌に載った研究では、ベースライン付近の高さ約75cmでボールをとらえる場面を、物理モデルで計算しています。ネットをぎりぎりで越えて相手のキッチンの奥に落とすには、打ち出し角度が上向き約12.5〜22.5度(クロスかストレートかで変わる)必要、という結果でした。次のステップ4で説明するようにネットの上に余裕を持たせるなら、打ち出しはこれより上向きになります。どちらにしても、ドロップはボールを水平に打ち出すショットではなく、前へ上向きに送り出すショットです。

ステップ4:頂点は自分側に。ネットには余裕を持たせる

理想は、自分側のキッチンラインの上あたりでボールがいちばん高くなり(頂点)、そこから下がりながらネットの上を余裕を持って越えて、相手のキッチンの奥、相手の足元あたりに落ちる軌道です。

沈むドロップと叩かれる浮き球を、ピックルボールのコートを横から見て比べた図解。ベースライン付近から打った理想のドロップ(緑の実線)は、自分側のキッチンラインの上あたりで頂点を迎え、下降しながらネットの上を余裕を持って越えて、相手のキッチンの奥、キッチンラインの後ろに立つ相手の足元に落ちる。高く浮いた球(赤の破線)は、ネットより高いまま相手に届いて上から叩かれる。自分側のコートには、打ったら前へ出る矢印

頂点を自分側に置けば、ネットを越える時点でボールはもう下り始めています。相手はネットより低い位置で、下から持ち上げるしかありません。逆に、頂点がネットの真上や相手側に来ると、ボールは高いままネットを越えて、待ち構えた相手に上から叩かれます。

低く通そうとして、つい「ネットすれすれ」を狙いたくなりますが、その必要はありません。すれすれを狙うと、少しのズレでネットにかかって、その場でラリーが終わります。少し高めに越えたぶんには、まだラリーは続きます。海外のコーチの解説では、ネットの上を30〜90cmくらい(ときにはそれ以上)空けて越えるのが目安とされています。プロツアー(PPA)の統計記事も、2025年1〜4月に行われた9大会の決勝27試合(男子・女子・混合ダブルス)で、3球目(ドロップと、速い球で攻めるドライブの合計)の93.6%が入っていたと紹介したうえで、アマチュアへの教訓として「ドロップには、ネットの上に十分な余裕を取る軌道が必要」とまとめています。

最初は「キッチンに入ればOK」で十分です。慣れてきたら、頂点が自分側に来ているかを意識してみてください。

ステップ5:打ったらすぐ前へ。相手が打つ瞬間は止まる

ドロップを打ったら、その場で結果を見送らずに、すぐ前へ動き出します。打ったまま後ろに残っていては、ドロップで作った時間が無駄になります。

ただし、勢いのまま突っ込むのではなく、相手が打つ瞬間には一度止まって構えます(スプリットステップ)。ドロップが低く沈んだら、止まりながら少しずつキッチンラインまで。浮いてしまったら、無理に詰めずに1〜2歩で止まり、低く構えて次の球に備えましょう。打ったあとの進み方は、トランジションゾーンの攻略にまとめています。

💡 よしコーチのポイント 5つを一度に意識するのは無理があります。まずはステップ2(低い姿勢)とステップ3(下から前へ運ぶ)の2つだけに絞ってみてください。この2つが噛み合うと、狙いも後からついてきます。


テニス経験者がはまる罠:スライスの「振り下ろし」

ドロップの「柔らかく置く」感覚は、テニスのスライスによく似ています。だからテニス経験者ほど、無意識にスライスの要領で打ちにいきます。ところが、タッチは似ていても、基本のドロップとスライスでは、スイングの向きがほぼ逆です。

  • テニスのスライス:ラケットを上から下へ振る(高→低)。ボールの下を切って、バックスピンをかけながら「抑え込む」動き
  • ピックルボールの基本のドロップ:パドルを下から前へ運び上げる(低→高)。ボールを前へ、そっと送り出す動き

テニスのスライスとピックルボールのドロップの振る向きを比べた図解。左のテニスのスライスは、ラケットを高い位置から低い位置へ振り下ろし、ボールの下を切って抑え込む。右のピックルボールのドロップは、パドルをボールより低い位置から前へ運び上げ、ボールを下から前へ運び出す。下に「タッチは活かす。振る向きだけを変える」の一言

テニスの「上から切る」感覚のまま打つと、切り下ろしすぎて球が短く落ち、ネットにかかりやすくなります。上から大きく振るぶんパドルの通り道も長くなるので、ネットしたり浮いたりと、高さが毎回ぶれます。「柔らかく打っているのに、なんでネットばかり?」というときは、まずここを疑ってみてください。

ちなみにピックルボールにも、バックハンドで逆回転をかける「スライスドロップ」という打ち方はあります。ただしそのスイングは、上から入ってボールの下をくぐり、最後は上へ抜けていく形で、上から下へ切り下ろして終わる動きとは別物です。面をやや開いて運べば、自然に少し逆回転がかかるので、それはそのままでOK。先ほどの研究でも、ドロップの成否への回転の影響は小さく、決め手は打ち出しの角度とスピードだとされています。

僕もいまだに、試合の緊張した場面では、15年しみついたスライスの振り下ろしが顔を出します。だから練習では、パドルを先にボールより低い位置へ下ろしてから振り始める素振りを、スマホで横から撮って確かめてみてください。自分では下から運んでいるつもりでも、思ったより振り下ろしていることに気づくかもしれません。タッチは活かして、振る向きだけを変える。覚えておくのはこの一点です。

テニスとの違いの全体像は、テニス経験者のためのピックルボール完全ガイドにまとめています。


ドロップかドライブか、迷ったときの目安

3球目は、いつでもドロップが正解とは限りません。低い球が来たときや、相手がもうキッチン前にいるときはドロップ。ネットより高い位置で打てる球が来たときや、相手がまだ後ろにいるときは、ドライブも有力です。

練習ではドロップを基本に据えるのがおすすめですが、試合でまだ安定しないうちはドライブ中心でも構いません。判断の軸はサードショット ドロップ vs ドライブ|3打目の使い分けに一本まるごと書いています。


ドロップのよくあるミスと直し方

ドロップのミスは、だいたい次の4つに分けられます。自分がどれに当てはまるか、チェックしてみてください。

サードショットドロップのよくあるミス4つと直し方をまとめた図解。ボールが浮く→頂点を自分側に、すくい上げない。ボールが長い→握りをゆるめる(10段階で3)。ネットにかかる→切り下ろさず下から前へ、ネットの上に余裕を。力んでしまう→キッチンに入れば上出来

ミス1:ボールが浮く

まず疑いたいのは頂点の位置です。ネットの真上や相手側でいちばん高くなっていたら、ステップ4で書いたように、頂点を自分側のキッチンラインあたりに置くイメージに変えてみてください。面を開きすぎていたり、下からすくい上げようと力んでいたりするのも原因になります。「すくう」ではなく「前へ運ぶ」です。

ミス2:ボールが長い

キッチンを越えてしまうのは、たいてい力の入れすぎです。握りが強いか、手首でこねているか、テイクバックが大きいか。握りを10段階で3に戻し、手首は使わず、小さなテイクバックから肩で前へ運びましょう。

ミス3:ネットにかかる

テニス経験者がとくにやりがちなのが、スライスの章で書いた振り下ろしです。パドルを先に下ろしてから、下から前へ振ってください。握りが強すぎたり、打ち終わる前にパドルを引いてしまったりするのも原因です。打ったあとも、パドルを狙う方向へ送り出しきりましょう。キッチンのネット寄りを狙うのもネットの原因になるので、狙いはキッチンの奥にしてください。

飛距離が足りないときは、曲げたひざを打つと同時に少し伸ばして、前足へゆるやかに体重を移すと、ネットを越える軌道が作れます。上体ごと立ち上がらないように注意してください。

ミス4:力んでしまう

「決めなきゃ」と思うと、腕も握りもガチガチになります。ドロップは決めるショットではなく、前へ上がるためのつなぎです。「キッチンに入れば上出来」くらいの気持ちで打ったほうが、結果的にいいドロップが出ます。

💡 よしコーチのポイント ミスが続くと、つい手先で何とかしようとしがちです。でも手のタッチをいじる前に、足と姿勢を見直してみてください。低くなれているか、打つ前に止まれているか。「低く、止まって、前で打つ」の3点です。


ドロップが上達する練習ドリル2つ

練習は、地味な反復がいちばん効きます。僕がおすすめしたいのは次の2つです。

ドリル1:ドロップ&前進(ペア練習)

パートナーにキッチンラインから球出し(またはリターン役)をお願いして、ステップ5の「打ったら前へ」までをセットで練習します。

  1. ベースライン付近からドロップを打ったら、結果を見送らずに2〜3歩前へ出る
  2. パートナーが打つ瞬間にスプリットステップで止まり、低く構える
  3. 返ってきた球をまた相手の足元へ落として、前へ。キッチンラインに着いたら、そのままディンク(キッチン前での柔らかい打ち合い)のラリーにつなげる

1球ごとに、パートナーに「今の球、攻撃できた?」と聞いてみてください。相手に攻撃させなかったら、それがいいドロップです。ディンクのコツは、ディンク戦を制する5つの基本で詳しく書いています。

ドリル2:ターゲット・ドロップ(一人でもOK)

相手のキッチンの真ん中あたりに、コーンやタオルなどの目印を置きます。ベースラインに立ち、自分でボールを落として弾ませてからドロップを10球。目印からパドル1本分以内に落ちた本数を数えます。海外の解説(The Dink)では、まず10球中6球、次に8球が目標とされています。8球入るようになったら、目印をキッチンの奥(相手側のキッチンラインの30cmほど手前)へずらしてみてください。試合で狙うのはキッチンの奥なので、最後はそこに合わせます。左右のコースは気にせず、弧の高さと落ちる位置だけに集中してください。

ほかの一人練習は、一人でもできる練習メニューにまとめています。

3球目は、自分たちのサーブから始まる流れの中の1球です。サーブの打ち方はピックルボールのサーブ完全ガイドに、レシーブ側に回ったとき、深く返して相手の3球目を難しくする打ち方はリターン(2打目)の基本にまとめています。


まとめ

サードショットドロップは、後ろから前へ上がる時間を、柔らかいボールで作るショットです。打ち方で覚えておいてほしいのは、ゆるく握って低く沈み、パドルを先に下ろして、下から前へ運ぶこと。頂点は自分側に置いて、ネットには余裕を持たせる。打ったらすぐ前へ出て、相手が打つ瞬間は止まる。テニス経験者の方は、タッチはそのまま活かして、スライスの振り下ろしだけを「下から前へ」に変えてください。

ドロップは才能より反復です。地味なドリルを続けていけば、ボールが面に乗る感覚は少しずつつかめてきます。

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References

  1. USA Pickleball — How to Play Pickleball(ツーバウンドルール)
  2. USA Pickleball — Basics of the Third Shot Drop(握りの強さ)
  3. USA Pickleball — Official Rulebook(コートの寸法)
  4. The Dink — Third Shot Drop Pickleball: 3rd Shot Guide(定義・ドリル)
  5. The Dink — Third Shot Drop: The Apex Fix That Changes Everything(頂点の位置)
  6. PrimeTime Pickleball — Master Your Third Shot Drop With The Perfect Height & Trajectory(ネットの上の余裕)
  7. PPA Tour — Keeping Third Shots “In Play”: a pro stats study
  8. Steyn ほか — Executing a successful third shot drop in pickleball(International Journal of Sports Science & Coaching, 2026)
よ
Author
よしコーチ / Pickleball Lab 代表
元スキー世界大会出場選手・現役テニスコーチ。2026年LAでピックルボールと出会い、国内外100本以上のパドルを試打。Engage Pickleball唯一の日本正規代理店(2026年5月時点)。
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