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フォームコア徹底解剖|第4世代パドルの素材・歴史・PBCoR

よ
よしコーチ
Pickleball Lab 代表
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フォームコア徹底解剖|第4世代パドルの素材・歴史・PBCoR

ここ1〜2年で、パドルのスペック表に「foam」の文字がぐっと増えました。フォームコアは、いま「第4世代」と呼ばれるパドルの中心にある作りです。

よしコーチです。テニス歴15年、2026年にピックルボールに出会いました。この記事はフォームコアとは?(入門編)の続きです。フォームコアがなぜ生まれ、何でできていて、反発の規格PBCoRとどう関わっているのかを、海外の資料をもとに掘り下げます。


大前提:パドルの「世代」は公式の規格ではありません

本題の前に、ひとつだけ。ピックルボールのパドルは「第1世代」「第4世代」のように、世代で語られることがよくあります。ただ、これは公式の規格ではありません。コアの作りが変わるたびに、メーカーやレビューサイトが使い始めた呼び名です。USA Pickleball(アメリカの統括団体)も2026年6月の記事でこの流れを世代に分けて紹介していますが、第4世代については「多くの人がそう呼ぶ」という言い方をしています。

どこで区切るかは、情報源によって少しずつ違います。大まかな流れは次のとおりです。

ピックルボールのパドルの「世代」の流れを、コアの断面のアイコンと一緒に4段で示した図解。第1世代(1990年代〜)はハニカムのコアを上下2枚の面で挟む作り、第2世代(2022〜23年)は熱と圧力で面とコアを一体に成形するサーモフォーム、第3世代(2024年〜)はハニカムのコアにフォームを足した作り、第4世代(2025年〜)はコア全体をフォームにした作り。時期は目安で、世代は公式の規格ではない呼び方

外周のフォームを第2世代の特徴とする情報源(The Kitchen)もあれば、第3世代の特徴とする情報源(USA Pickleball)もあります。2026年には、何種類ものフォームを組み合わせたパドルを「第5世代」と呼ぶ売り手も出てきましたが、こちらも決まった定義はありません。

ひとつ言えるのは、世代が進むほど、コアの中でフォームが担う役割が大きくなってきたことです。フォームコアは、その流れのいちばん先にある作りです。


【過去】フォームコアが生まれた理由|サーモフォームの副作用

話は第2世代のサーモフォームから始まります。熱と圧力をかけて、面とコアと縁を一体に成形する作り方で、2022〜2023年ごろから広まりました。USA Pickleballは、これでパワーと耐久性が上がったと説明しています。生カーボン(Raw Carbon)の面と一緒に語られることが多いのですが、面の素材とコアの作りは別の話です。生カーボン面の話はRaw Carbon 素材ガイドへ。

ところが、この作りには副作用がありました。パドルの中で起きる傷み方は、主に3つあると説明されています(PickleballCentral)。

  • 層のはがれ(デラミネーション):面を作っている層どうしが、はがれる
  • 面とコアの接着のはがれ:面をコアに貼り付けている部分が、はがれる
  • コアのつぶれ(コアクラッシュ):打球をくり返すうちに、ハニカムのコアがつぶれていく

やっかいなのは、傷み方によっては、使い込むほど反発が強くなることです。面がたわんで戻るトランポリン効果が強まり、新品のときより速い球が出る。こうなったパドルは「ホットパドル(熱いパドル)」と呼ばれ、USA Pickleballの基準から外れます。逆に、反発が死んでしまう「デッドスポット」になることもあります。買い替えのサインはパドルの寿命とお手入れにまとめています。

💡 よしコーチのポイント 「熱くなる」原因の説明は、資料によって分かれます。Selkirkは、層がはがれることでトランポリン効果が出ると説明しています。PickleballCentralは、層のはがれでそうなるという見方は今は考えにくく、コアのつぶれがいちばん有力だとしています。USA Pickleballの担当者も、使い込んでコアがすり減ったパドルが熱くなると話しています。原因を1つに決めつけている記事は、少し割り引いて読むのがいいと思います。

そこで出てきたのが、空洞のあるハニカムをやめて、フォームで芯を作るという発想です。つぶれる空洞がないので、コアのつぶれが起きにくい。これがフォームコアの出発点です。ただし、面の層や、面とコアの接着は、どんな作りのパドルでもはがれることがあります。


【素材】フォームコアの中身|EPP・MPP・EVA

ひとくちにフォームと言っても、素材はいくつかあります。よく名前が出るのは次の3つです。

  • EPP(発泡ポリプロピレン):小さな粒を金型の中で熱でふくらませて固めたフォームです。粒の量で密度を調整できます。全部フォームのコアに、いま最も多く使われている素材とされています(Pickleball.com)。打感は柔らかめで振動を吸い、芯を外したときも寛容だと紹介されることが多い素材です。
  • MPP(マイクロセルラー・ポリプロピレン):ポリプロピレンにガスを吹き込んで、細かい気泡を1つのかたまりの中に作ったフォームです(Pickleball.com)。打感の評価は分かれていて、「EPPより硬く、弾きが強い」という説明(The Dink)もあれば、「EPPより沈み込みが大きく、反応がおとなしい」という説明(Pickleball Effect、Pickleball.com)もあります。
  • EVA(エチレン酢酸ビニル):柔らかく、よく弾むフォームです。それだけでコアを作ると弾みすぎるため、いまはコアの外周を囲むリングなどに使われるのが一般的です(Pickleball.com)。SelkirkのBoomstikは「EVA Power Ring」、EngageのX2は「EVA Foam Transition Ring」という名前で、フォームの芯の周りにEVAを回しています。

フォームコアのパドルに使われる主な素材3つを比べた図解。EPP(発泡ポリプロピレン)は粒を固めたフォームで、全部フォームのコアにいちばん多く使われる。MPP(マイクロセルラー・ポリプロピレン)は細かい気泡のかたまりで、打感の評価は資料によって分かれる。EVA(エチレン酢酸ビニル)はよく弾む柔らかい素材で、コアの外周のリングに使われる。密度と重ね方でも打感は変わる

フォームの使い方には、ほかにもいくつか型があります。ハニカムの中にフォームの層を足して芯を「浮かせる」作り(フローティングコア)や、フォームの芯の周りに、さらに別のフォームのリングを重ねる作りです。SelkirkのOMNIは、PureFoamの芯の周りに、PureFoamのリングとEVAのリングを重ねています。狙いはどれも共通で、反発を出しながら、面のどこで打っても反応をそろえることです。

ハニカムとは違う道を歩いてきたブランドもあります。Gearboxは、ハニカムの代わりに炭素繊維のリブ(骨組み)でコアを作る独自の構造「SST(Solid Span Technology)」で知られてきました。そのGearboxが2026年秋に出したPressure Xは、SSTの骨組みのまわりをEPPかMPPのフォームで埋めた作りです。Pickleball.comのレビューでは、ふつうはEPPより柔らかいとされるMPPのモデルのほうが、外周から芯を押さえる作りの違いで硬い打感になっていて、フォームの種類より作りのほうが打感を左右すると書かれています。フォームを使うかどうかより、フォームをどう組み合わせるかの競争に移ってきている、と言えそうです。

💡 よしコーチのポイント 「フォームコア」と書いてあっても、どのフォームを、どこに、どれだけの密度で使っているかで、打感は大きく変わります。Selkirkには、フォームのコアの外周に切り込みを入れてしなり方を変えたモデルがありますし、EngageのX2は4つの密度のフォームでコアを作っています。スペック表の「foam」の一語だけで打感を決めつけないのがコツです。


【強みと弱み】フォームコアの良いところ、気をつけたいところ

強み

フォームコアの強みとして、よく挙げられるのは次の4つです。

  • 芯が広く、反応がそろいやすい:面のどこで打っても反応がそろいやすく、デッドスポットが減ると説明されています(The Kitchen)。
  • コアがつぶれにくく、性能が長持ちしやすい:つぶれる空洞がないので、コアのつぶれが起きにくい。EPPのコアは、これまでのところ実際のプレーでも耐久性が高いとされていますが、長い期間のデータはまだ少ない段階です(Pickleball Effect)。
  • 振動が少なく、打感が落ち着く:EPPは振動を吸い、柔らかめの打感だと紹介されます。打球音も落ち着くと言われますが、ハニカムと音の大きさを数字で比べた測定は見つかりませんでした。近所への音が気になる場合は、騒音問題と対策で紹介したUSA Pickleballの静音カテゴリーの用具を選ぶほうが確実です。
  • ボールが面に乗る時間(ドウェル)が少し長い:そのぶん、球の方向や回転を調整しやすいとされます。ただ、フォームの違いがスピン量に与える影響は小さいという見方もあります(Pickleball.com)。

フォームコアが評価されているのは、「いちばん飛ぶ」からではなく、「長く使っても性能が変わりにくく、面のどこで打っても反応がそろう」からです。

弱み

一方で、気をつけたい点もあります。

  • パワーが控えめに感じることもある:初期の全部フォームのパドルは、第3世代の強い反発に慣れた人には、弾きが物足りないと評されました(The Kitchen、2025年3月)。いまはパワー寄りのフォームコアも出ていて、フォームだから弱いとは言えません。
  • 素材によっては耐久性の心配も:MPPを使ったモデルの一部では、面とコアの接着がはがれる、もろく割れるといった心配が報告されています。原因ははっきりしておらず、長い期間のデータもまだ少ない段階です(Pickleball Effect)。
  • 価格が高めのモデルが多い:各ブランドの上位モデルから広まりました。2026年には、それより安い価格をうたうフォームコアのパドルも出てきています。
  • 「フォーム」の一語では中身が分からない:素材・密度・重ね方の組み合わせで、パワー寄りにもコントロール寄りにもなります。

【現在】フォームコアとPBCoR|反発の上限と大会での検査

いま、フォームコアの話は規制と切り離せません。鍵になるのが PBCoR という試験です。時速約60マイル(約97km/h)で撃ち出したボールがパドルに当たって跳ね返る速さから、パドルの反発(トランポリン効果の強さ)を数字にしたもので、数値が高いほど、よく弾むパドルということになります。

  • 上限:USA Pickleballが2024年11月に0.44で始め、2025年11月に0.43へ下げました(2026年10月時点も0.43)。上限は、その日より後に認定の試験を受けるパドルにかかります
  • 既存のモデル:すでに認定されていたモデルも試験の対象です。USA Pickleballは2024年12月、最初の上限(0.44)を超えた既存のモデルを、2025年7月1日から公認大会で使えなくすると発表しました
  • 大会での検査:2026年1月から、アマチュアの一部の大会(ゴールデンチケット大会)で、出場するパドルをその場で検査する取り組みが始まりました。最初に見ているのは面のたわみや摩擦などで、PBCoRとスピンの測定は次の段階で加えるとしています(2026年10月時点で、加わったという発表は見つかっていません)。3月までに2,000本以上を検査し、基準を満たさなかったのは約6%。いちばん多い理由はパドルの傷みでした

USA PickleballのPBCoRと認定の動きを示した年表の図解。2024年11月に上限0.44で試験開始、2024年12月に7モデルの取り消しを予告、2025年6月にうち1モデルの取り消しを撤回、2025年7月に残る6モデルが公認大会で使えなくなり、2025年11月に上限0.43へ、2026年1月にアマチュア大会で会場検査を開始、2026年10月に新しく認定を申請するパドルはスピン量2,100RPM以下に。2026年10月時点

この試験が生まれたのは、サーモフォームや、ハニカムにフォームを足した第3世代のパドルで、反発が大きく上がったからです。全部フォームの第4世代が広まったのはその後で、メーカーはいま「上限の中で、どれだけ反発と打感を作り込むか」を競っています。測り方の詳しい中身や、認定を取り消されたモデルの経緯はPBCoRの解説記事、認定の仕組みはUSAP認定とUPA-A認定の違いにまとめています。


【未来】フォームコアは、どこへ向かうのか

最後に、これからを僕なりに考えてみます。

  • フォームコアは上位モデルだけのものではなくなる:2026年には、上位モデルよりかなり安い価格をうたうフォームコアのパドルも出てきました。この流れは続くと思います。
  • フォームの組み合わせ方の競争:密度の違うフォームを重ねる、外周にリングを回す、炭素繊維の骨組みのまわりをフォームで埋める。すでに各社がいろいろな作りを出していて、差は「どのフォームを、どこに、どう使うか」に出てきます。
  • スピンは、回転数そのものを測る形へ:これまでUSA Pickleballは、面の粗さと摩擦係数の上限でスピンを抑えてきました。2026年10月1日からは、新しく認定を申請するパドルのスピン量を直接測り、2,100RPM(1分間に2,100回転)以下に制限しています。面の素材とスピンの関係は生カーボンのグリットとスピンの科学にまとめました。
  • パワーの話は、上限で終わらない:PBCoRは、決まった条件で当てたときの反発を測る試験で、フルスイングの球の速さそのものではありません。PBCoRの導入後も、認定パドルのフルスイングでの球速は発売年ごとに上がっている、という測定もあります(Pickleball Effect)。メーカーと規制の追いかけっこは、まだ続きそうです。

僕の見立てでは、フォームコアはもう新しい技術ではなく、これからの標準です。ただ、標準になったぶん、「フォームコアだから良い」とは言えなくなっていきます。


まとめ:フォームコアは第4世代の中心。ただし中身はさまざま

  • パドルの「世代」は公式の規格ではなく、区切り方は情報源で違う。それでも「コア全体をフォームにした作り=第4世代」という使い方は、USA Pickleballの記事や海外のレビューサイトでそろっている
  • フォームコアが広まった背景は、サーモフォームや第3世代のパドルで起きたコアのつぶれと、ホットパドルの問題
  • 素材はEPP・MPP・EVAで性格が違う。「foam」の一語で打感を決めつけない
  • 反発はPBCoRで上限0.43。大会で使うなら、そのモデルがUSA PickleballやUPA-Aの承認リストに載っているかを確かめる
  • これからは、フォームの組み合わせ方の競争と、スピンなど新しい規制との付き合いが続く

もっと基礎から知りたい方はフォームコアとは?(入門編)、パワーとコントロールの整理はコントロール系 vs パワー系、ブランドごとの違いは主要ブランド徹底比較をどうぞ。

当店で扱うパドルにも、フォームコアのモデルがあります。Engage(日本唯一正規代理店)のX2は、Engageが「100% Foam」とうたう、4つの密度のフォームでできたコア。Six Zero(正規代理店)のBlack Opal 14mmは「G4 Aerospace Solid Foam Core」。Selkirk(正規代理店)のBoomstikやOMNIは、PureFoamの芯の周りにEVAのリングを回した作りで、SLK Dauntlessは、一体のPureFoamのコアです。道具の中身まで知って選ぶと、パドル選びはもっと面白くなりますよ。

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関連商品

この記事で取り上げた、当店で扱うフォームコアのパドルです。

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関連記事


References

  1. USA Pickleball — From Wood to Foam: The Evolution of Pickleball Paddle Technology(2026年6月10日・パドルの世代の流れ)
  2. The Kitchen — Pickleball paddle evolution(2025年3月6日・世代と時期)
  3. The Kitchen — Foam-core paddles are changing pickleball: Overview of Gen 4(2025年3月7日)
  4. Pickleball Union — Gen 5 Pickleball Paddles Are Here: What Does Gen 5 Actually Mean?(2026年8月14日・「第5世代」に定義はない)
  5. Pickleball.com — Foam core paddles explained(2026年2月20日・EPP・MPP・EVA)
  6. The Dink — The Anatomy of a Pickleball Paddle: EPP vs. MPP Foam, Explained(2026年3月20日)
  7. Pickleball Effect — Foam vs Polymer Pickleball Paddles(2026年5月9日・耐久性とMPPの懸念)
  8. PickleballCentral — Explained: Understanding Delamination in Pickleball Paddles(2023年10月18日・はがれとコアのつぶれ)
  9. Selkirk — Comparing types of pickleball paddle construction: The sandwich method and thermoforming(構造とはがれ)
  10. Selkirk — How foam technology is redefining pickleball paddles(PureFoam)
  11. USA Pickleball — NPRM 24-002 PBCoR Testing(2024年10月1日・上限0.44→0.43と施行日)
  12. USA Pickleball — Paddle Certification Updates(2024年12月27日・上限を超えたモデルの公認大会での使用終了)
  13. USA Pickleball — Paddle Field-Testing Program at Golden Ticket Events(2026年1月16日・大会でのその場の検査)
  14. USA Pickleball — Improved Paddle Testing at Golden Ticket Events(2026年3月19日・2,000本以上を検査)
  15. USA Pickleball — Update Regarding the Spin Rate Test and Implementation Timeline(2026年7月8日・10月1日から2,100 RPM)
  16. Pickleball.com — Gearbox Pressure X MPP vs. EPP(2026年10月13日・SSTとフォームの組み合わせ)
  17. Pickleball Effect — Are Pickleball Paddles Getting More Powerful Despite PBCoR?(2026年10月14日)
よ
Author
よしコーチ / Pickleball Lab 代表
元スキー世界大会出場選手・現役テニスコーチ。2026年LAでピックルボールと出会い、国内外100本以上のパドルを試打。Engage Pickleball唯一の日本正規代理店(2026年5月時点)。
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