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PBCoRとは?パドルのパワー規格(反発係数)の上限と測り方

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よしコーチ
Pickleball Lab 代表
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PBCoRとは?パドルのパワー規格(反発係数)の上限と測り方

パドルの商品説明で「PBCoR .43」という表記を見かけたことはありませんか。これは、USA Pickleballが2024年11月から使っている、パドルのパワーを測る試験の名前です。この試験の数値の上限が、いまのパドルのパワーの規格になっています。

よしコーチです。テニス歴15年、2026年にピックルボールに出会いました。この記事では、PBCoRが生まれた理由と測り方、上限の数字の読み方、認定を取り消されたモデルや大会会場での検査まで、2026年10月時点の公式資料をもとに整理します。フォームコア徹底解剖、公式球戦争と同じシリーズの1本です。


PBCoRって、そもそも何を測ってるの?

まず名前から。PBCoRは Paddle/Ball Coefficient of Restitution(パドルとボールの反発係数)の略です。

反発係数(CoR)は、物理でいうと ぶつかる前と後の"速度の比"。1に近いほど、勢いを失わずによく跳ね返る、つまりよく飛ぶ・パワーが出る、という指標です。スーパーボールが高く弾むのは反発係数が高いから、粘土のかたまりが弾まないのは低いから、というイメージです。

パドルの世界でこれが問題になるのは、「トランポリン効果」があるからです。USA Pickleballの説明では、ボールが当たった瞬間に面がたわみ、すぐに元の形に戻ることで、ボールを弾き出す現象のこと。これがふつうのプレーで出る以上のスピードと力をボールに与えます。PBCoRは、このトランポリン効果の強さ、つまりパドルのパワーを数字で測るための試験です。

💡 よしコーチのポイント ここは勘違いしやすいところです。PBCoRが見ているのは「ボールをどれだけ弾き返すか」、つまりパワーだけです。スピンは別の試験で見ます。これまでは面のザラつき(表面粗さ)と摩擦係数に上限を設けていましたが、2026年10月1日からは、新しく認定を申請するパドルに、ボールの回転数(スピン量)そのものの上限(2,100RPM)がかかるようになりました。パワーはPBCoR、スピンは回転数。測るものが分かれています。


PBCoRはなぜ生まれた?パワーの上がりすぎとホットパドル

そもそも、なぜこんな規格が必要になったのか。背景には、2つの困った問題があります。

1つ目は、パドルのパワーが上がりすぎたこと(パワークリープ)。熱と圧力で面とコアを一体に成形するサーモフォーム(熱成形)や、ハニカムのコアの外周にフォームを足した作りなど、新しい設計と作り方で、パドルの反発は強くなってきました。USA Pickleballによると、2023年の終わりから2024年にかけて、それまでより反発の強いパドルが市場に出てきています。USA Pickleballは、強すぎるトランポリン効果は繊細なタッチやコントロール、技術の比重を下げ、不公平にもつながるとしています。速すぎる球は安全面の心配にもなります。技術の流れはフォームコア徹底解剖に詳しく書きました。

ピックルボールのパドルの「世代」の流れを、コアの断面のアイコンと一緒に4段で示した図解。第1世代(1990年代〜)はハニカムのコアを上下2枚の面で挟む作り、第2世代(2022〜23年)は熱と圧力で面とコアを一体に成形するサーモフォーム、第3世代(2024年〜)はハニカムのコアにフォームを足した作り、第4世代(2025年〜)はコア全体をフォームにした作り。時期は目安で、世代は公式の規格ではない呼び方

2つ目が、使い込むほど反発が強くなる"ホットパドル"の問題です。打球をくり返すうちにコアが少しずつつぶれたり、層がはがれたり(デラミネーション)すると、面がたわみやすくなり、ボールが速く飛び出すことがあります。どれが主な原因かは資料によって説明が分かれますが、USA Pickleballの担当者は、使い込んでコアが傷んでくると、ふつうはたわみが大きくなると説明しています。使うほどパワーが上がるのは一見おいしい話ですが、同じモデルでも個体ごとに性能がばらつき、規格を超えてしまうこともあります。USA Pickleballが「パドルは使っている期間を通して、認定の条件を満たし続けなければならない」としているのは、このためです。

認定をめぐる出来事は、PBCoRが始まる前にもありました。2024年5月には、JOOLAの第3世代(Gen 3)の一部モデルが、USA Pickleballの承認リストから外れています。USA Pickleballの発表では、JOOLAが「認定の審査に出したのは、市販品とは違うパドルだった」と申告したためで、その後に出し直したパドルも基準を満たさなかったとしています(この件はJOOLAブランド解説でも扱っています)。

USA Pickleballは規格改定通知の中で、それまでの試験は止まった状態で面を押して硬さ(たわみ)を測るもので、パワーの代わりの目安として使ってきたが、新しい設計や作り方で増えたパワーは捉えきれない、と説明しています。だから、ボールを実際に当てて測る試験が必要になりました。


PBCoRの測り方|ボールを撃ち込んで測る

測り方は、USA Pickleballの規格改定通知(NPRM 24-002)にこう書かれています。

  • エアキャノン(空気砲)で試験用のボールを撃ち出し、試験台に取り付けたパドルの面に当てる。速さは時速60マイル(約97km)が標準
  • 当たる前の速さと、はね返った速さを測り、そこからPBCoRの値を出す

技術解説サイトのPickleball Scienceによると、パドルはグリップの端に近い1点を軸に、自由に回れる状態で取り付けられます。

面白いのは、この試験が 野球・ソフトボールのバットの性能試験(ASTM F2219-14)を下敷きにしていることです。打球が飛びすぎないように管理してきたバットの試験を、パドルに応用したわけです。止まった状態で硬さを測る旧来の試験とは、考え方がまったく違います。実際にボールをぶつけて、飛び出す速さそのものを見るので、フレームやエッジ、面の作り込みまで含めたパワーが数字になります。

PBCoRの測り方を示した図解。エアキャノンから時速約97km(60マイル)でボールを撃ち出し、試験台のパドルの面に当てる。入る速さとはね返る速さの2つの速さから数値を出し、上限は2025年11月から0.43。出典はUSA Pickleballの規格改定通知(NPRM 24-002)


PBCoRの上限は0.43|数字の読み方

数字は、USA Pickleballの規格改定通知(NPRM 24-002)と規格書で確かめたものです。

施行時期 PBCoR 上限(超過不可=Not To Exceed)
2024年11月1日〜 0.44
2025年11月1日〜 0.43(一段引き下げ)

上限は2024年11月に0.44で始まり、2025年11月に0.43へ下がりました。上限は、その日より後に認定の試験を受けるパドルにかかります。それより前に認定されたパドルも、USA Pickleballが市場から集めて調べ、上限を超えたものは認定を取り消しています(次の節)。2026年10月時点でも、USA Pickleballの規格書(2025年1月のRevision 3.0)に載っている上限は0.43のままで、次の引き下げは発表されていません。

パドルの商品説明で見かける「PBCoR .43」は、この0.43の上限で試験に通ったという、メーカー側の表示です。大会で使えるかどうかを決めるのは、USA Pickleballの承認リストに載っているかどうか。モデル名に「PBCoR.43」と入れていたのに、製品版が試験に通らず、USA Pickleballから「認定済みと表示しないように」と発表されたパドルもありました(2025年1月)。

💡 よしコーチのポイント この数字の読み方には注意が必要です。規格改定通知には、計算式の細部までは書かれていません(通知が参照している試験の手順書は、PBCoRと一緒に、パドルの重心の位置と慣性モーメントの測り方も扱うと説明されています)。技術解説サイトのPickleball Scienceは、報道された数字をもとに、0.44は簡単な計算による"実効値"で、パドルの動きやボールの変形による損失まで含めた物理の反発係数なら0.6前後になる、と分析しています(2025年2月)。0.43は「USA Pickleballの試験での線引き」と受け取っておくのが安全です。上限は一度0.44から0.43へ動いているので、今後また動く可能性もあります。


PBCoRで何が変わった?認定の取り消しと会場の検査

上限ができたことで、メーカーにも選手にも影響が出ています。

まずメーカー。これまでは「とにかくパワー」でよかったのが、「上限0.43の枠内で、いかに最大のパワーと打感を引き出すか」という設計の勝負に変わった、と僕は見ています。

そして、すでに認定されていたモデルの取り消しです。USA Pickleballは2024年12月、試験の基準を超えたとして、7モデルを2025年7月1日から公認大会で使えなくすると発表しました(JOOLA Perseus 14mm・16mm Mod TA-15、Gearbox Pro Power Elongated、ProKennex Black Ace の Ovation・Pro・LG・XF)。このうち ProKennex Black Ace LG は再試験で合格し、2025年6月3日に取り消しが撤回されています。残る6モデルは2025年7月1日に公認大会向けの認定から外れ、いまの承認リストにも載っていません。

これとは別に、2025年2月13日には、Chorus Fire EX・SX がPBCoRの試験に通らなかったとして承認リストから外れ、その日から大会では使えなくなりました。公認大会で使えたパドルが、新しい試験で外されることが実際に起きています(大会に出ない普段のプレーで使うことまで禁止されたわけではありません)。認定パドルの基礎はUSAP認定パドルとは?にまとめています。

USA PickleballのPBCoRと認定の動きを示した年表の図解。2024年11月に上限0.44で試験開始、2024年12月に7モデルの取り消しを予告、2025年6月にうち1モデルの取り消しを撤回、2025年7月に残る6モデルが公認大会で使えなくなり、2025年11月に上限0.43へ、2026年1月にアマチュア大会で会場検査を開始、2026年10月に新しく認定を申請するパドルはスピン量2,100RPM以下に。2026年10月時点

さらに2026年1月からは、USA Pickleballのアマチュア大会(全米選手権の予選にあたるゴールデンチケット大会)で、会場でのパドル検査が始まりました。1本5分かからない検査で、まずは摩擦係数・面のたわみ・重さとバランスを測り、検査を通ったパドルにはRFIDのシールを貼ります。データはシールに記録され、次の会場の検査で読み出せる仕組みです。PBCoRとスピンの測定は、必要な試験所の認証が終わってから加える予定とされています(2026年10月時点で、加わったという発表は見つかっていません)。USA Pickleballによると、3月までに2,000本以上を検査し、基準を満たさなかったのは約6%。いちばん多かったのは、使い込んでパドルが傷んでいたケースでした。認定は「取ったら終わり」ではなく、使っている間ずっと基準の中にいることが求められています。

📝 プロの大会は、別の認定です PPAツアーやMLPのプロの試合では、USA Pickleballとは別の「UPA-A」の認定が必要です。UPA-Aはパワーを「PEF」という独自の数値で測り、新品で0.385以下、使い込んだ状態を再現する試験(ABI)のあとでも0.405以下と定めています。スピンも、使い込んだあとを含めて2,100RPM以下です(2026年7月の規定 v26.6)。測る機関も手順も違うので、PBCoRの0.43と数字の大小だけで比べないほうが安全です。2つの認定の違いはUSAP認定とUPA-A認定の違いにまとめています。

大事なのは、認定はモデルごとに、時期によって変わりうるということです。だから「このブランドは全部OK」とは言えません。買う前には商品ページの認定の表示を見て、大会に出る予定があれば、USA Pickleballの承認パドルリストでもモデル名を確かめてください。調査中のモデルなどは、同じサイトのCompliance(適合状況)のページに載ります。


これからのパドル|パワーに上限ができた先

最後に、僕なりの展望を。

パワーに上限ができたということは、パワーの大きさだけでは差がつきにくくなるということです。そうなると、メーカーが競うところは別の軸へ移っていく、と僕は考えています。

  • スピン:2026年10月からは、新しく認定を申請するパドルは、回転数の上限(2,100RPM)の中での勝負になります。面の素材とスピンの関係は生カーボンのグリットとスピンの科学に書きました。
  • スイングウェイト/重量バランス:同じパワーの上限なら、振り抜きやすさと当たり負けしにくさの作り込みが効いてきます。振り心地の物理はスイングウェイトとツイストウェイトにまとめました。
  • コントロール・寛容性:芯の広さ、打感の素直さ。コントロール系 vs パワー系の考え方が、あらためて大事になります。
  • 静音:騒音は近隣トラブルの火種で、USA Pickleballも2023年9月に静音のカテゴリーを設けました(騒音問題と対策)。静かさも性能のひとつになっていくはずです。

要するに、「一番飛ぶパドル」を探す時代から、「上限の中でいちばん自分に合うパドル」を選ぶ時代へ。個人的には、これは歓迎しています。パワーに上限ができたぶん、スピンやタッチ、道具との相性で差がつく場面は増えていきそうです。どう選ぶかで迷ったらパドルの選び方 完全ガイドを土台にしてみてください。


まとめ:PBCoRは「パワーに引かれた線」

PBCoRを一言でまとめると、強くなりすぎたパドルのパワーに、USA Pickleballが数字で引いた線です。

新しい設計と作り方でパドルの反発が強くなり、使い込むほど反発が上がるパドルも問題になりました。そこでUSA Pickleballは、野球のバットの試験をもとにした試験で、上限を0.44、続いて0.43と決めました。スピンも、2026年10月1日以降に認定を申請するパドルから、回転数で上限を決めるようになりました。プロの大会には、これとは別にUPA-Aの基準があります。買うときは、そのモデルがいま認定されているかを、商品ページと承認リストで確かめてください。

当店で扱うEngage(日本唯一正規代理店)やSix Zero(正規代理店)のパドルも、商品ページのスペック表に認定の状況を載せています。大会で使う予定がある方は、承認リストもあわせて確かめてください。規格の中身を知っておくと、パドルのスペック表も読みやすくなります。

どのパドルが大会で使えるか、自分に合うのはどれかで迷ったら、LINEで僕(よしコーチ)に気軽に聞いてください。友だち追加は、ピックルボール・ラボ公式LINEからどうぞ。画面右下の緑の「LINE 公式」ボタンからも追加できます。


関連商品

大会で使うパドルを探している方は、各商品のスペック表で認定の状況を確かめながら選べます。

Engageのパドルを見る →

関連記事


References

  1. USA Pickleball — NPRM 24-002 PBCoR Testing(2024年10月1日・上限0.44/0.43・時速60マイル・ASTM F2219-14)
  2. USA Pickleball — Equipment Standards Manual Revision 3.0(2025年1月・2.E.6.f PBCoRの上限)
  3. USA Pickleball — Advanced Equipment Testing with New Coefficient of Restitution (PBCoR) Launching in Q4 2024(2024年8月22日・反発係数の定義)
  4. USA Pickleball — From Wood to Foam: The Evolution of Pickleball Paddle Technology(2026年6月10日・サーモフォームと外周のフォームでパワーが上がった)
  5. USA Pickleball — Paddle Certification Updates(2024年12月27日・2025年7月1日に公認大会で使えなくなる7モデル)
  6. USA Pickleball — ProKennex 11mm Black Ace LG Paddle Officially Relisted(2025年6月3日・取り消しの撤回)
  7. USA Pickleball — Statement Regarding Chorus Fire Paddles(2025年2月18日)
  8. USA Pickleball — Statement Regarding the Ronbus Ripple Paddle(2025年1月31日)
  9. USA Pickleball — Statements on De-Certified JOOLA Paddles(2024年5月16日・6月4日)
  10. USA Pickleball Equipment — FAQ(2023年の終わりから2024年に反発の強いパドル・上限を超えたパドルは認定の取り消し・使用期間を通して認定の条件を満たす必要)
  11. USA Pickleball Equipment — Approved Paddle List(承認パドルリスト)
  12. USA Pickleball Equipment — Compliance(調査中・削除などの適合状況)
  13. USA Pickleball — Paddle Field-Testing Program at Golden Ticket Events(2026年1月16日)
  14. USA Pickleball — 2026 Golden Ticket Tournament Schedule(2025年9月3日・Glendale は2026年1月21〜25日)
  15. USA Pickleball — Improved Paddle Testing at Golden Ticket Events(2026年3月19日・2,000本以上を検査)
  16. USA Pickleball — Update Regarding the USA Pickleball Spin Rate Test and Implementation Timeline(2026年7月8日・10月1日から新しく認定を申請するパドルはスピン量2,100RPM以下)
  17. USA Pickleball — Announces Quiet Category for Pickleball Products(2023年9月25日)
  18. UPA-A — Paddle Specifications and Testing Requirements v26.6(2026年7月28日・PEF 0.385/0.405・スピン上限2,100RPM)
  19. Pickleball Science — Analysis of the PBCoR Test(2025年2月25日・実効値と物理の反発係数の差の分析)
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Author
よしコーチ / Pickleball Lab 代表
元スキー世界大会出場選手・現役テニスコーチ。2026年LAでピックルボールと出会い、国内外100本以上のパドルを試打。Engage Pickleball唯一の日本正規代理店(2026年5月時点)。
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