パドル・ギアレビュー

スイングウェイトとツイストウェイト|同じ重さで振り心地が違う理由

よ
よしコーチ
Pickleball Lab 代表
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スイングウェイトとツイストウェイト|同じ重さで振り心地が違う理由

同じ8オンス(約227g)のパドルなのに、片方は軽く、もう片方はずっしり重く感じる。道具が好きな人なら、一度は不思議に思うところです。理由は、はかりに載せた数字(静的重量)と、振ったときに感じる重さが、別の物理量だからです。

よしコーチです。テニス歴15年、2026年にピックルボールに出会いました。この記事では、パドルの振り心地を決めるスイングウェイト(振ったときの重さ)とツイストウェイト(芯を外したときのねじれにくさ)を、慣性モーメントという物理から解説します。重さの基本はパドル重量完全ガイドにまとめています。


スケールの数字は「重さの半分」しか語っていない

パドルのスペック表に載っている「7.9オンス」のような重さは、静的重量(スタティックウェイト)です。はかりに載せて測った質量そのものです。もちろん大事な情報ですが、これだけでは振り心地は分かりません。

静的重量が同じ2本のパドルでも、振ったときの重さは別物になることがあります。 理由は、重さがどこに置かれているか(重量配分)の違いです。同じ重さでも、先端寄りに置けば重く感じ、手元寄りに置けば軽く感じます。金づちは、柄の端を持って振ると重く、頭のすぐ下を持って振ると軽く感じます。重さは同じなのに、です。同じことがパドルの中でも起きています。

💡 よしコーチのポイント 「重いパドル=疲れる/軽いパドル=楽」は、半分だけ当たっています。振ったときの重さを大きく左右するのは、はかりの数字よりも、重さがどこにあるか(回しにくさ)です。スペック表のオンスだけで選ぶと、思っていた振り心地と違うことがあります。


スイングウェイト:振り抜き軸まわりの「回しにくさ」

では、その「振ったときの重さ」を数字にしたのがスイングウェイトです。定義は、手元近くの1点(ピボット)を軸にして、パドルを振る向きに回したときの回しにくさです。物理の言葉では、振り抜き(ピッチ)軸まわりの慣性モーメント(MOI)にあたります。

スイングウェイトは、専用の測定機(HEADの「4-in-1」など)にパドルを固定して振り子のように揺らし、揺れの周期から計算します。単位は質量×距離の2乗で、測定機は kg・cm² で表示するのが一般的です(Pickleball Science は oz・in² でも表していて、1 oz・in² は約0.183 kg・cm²)。

ややこしいのは、どこを軸にして測るかが決まっていないことです。テニスラケットはグリップエンドから10cm(4インチ)を軸にするのが一般的ですが、パドルではメーカーやレビューサイトごとに違い、軸の位置を書いていないことも多いそうです。Pickleball Science は、握ったときの手のひらの中心にあたる、グリップエンドから約5cm(2インチ)を軸にして計算しています。

スイングウェイトとツイストウェイトの違いを示す図解。左のスイングウェイトは、グリップエンド近くの1点を通る横向きの軸を中心に、パドルを振る向きに回す。高いほどパワーと安定。右のツイストウェイトは、ハンドルの線を通る縦向きの軸を中心に、パドルをねじる向きに回す。高いほど芯外しに強い。どちらも慣性モーメント(Σmr²)で、軸から遠い重さほど効く

数字の大小が意味することは、シンプルです。

スイングウェイト 振り心地 向いているプレー
高い 重く感じる。振り出しは重いが、当たったときにボールを押し込める パワー・ドライブ・強い球を受けたときの安定
低い 軽く感じる。面をすばやく動かせる ネット前の速い打ち合い・カウンター・取り回し

数字の目安は、パドルの形で変わります。Pickleball.com が2026年7月に公開した、数百本の測定データから作った目安では、「中くらい」のスイングウェイトはワイドボディで109〜111、ハイブリッドで113〜116、イーロンゲイティドで117〜119です(ツイストウェイトと合わせて、後ろの表にまとめます)。同じ116でも、ワイドボディなら重め、イーロンゲイティドなら軽めです。

ただし、この目安も、どこを軸に測ったかは書かれていません。Pickleball Science の計算では、平均的なパドルでも、軸を5cm(2インチ)上下にずらすだけで、スイングウェイトが68〜145 kg・cm² まで変わります。数字は、同じ測り方で出したものどうしで比べてください。Pickleball.com によると、スイングウェイトの差は5ポイントでようやく振り比べて感じ取れるくらい、10ポイントあれば誰でも分かるそうです。

テニスの経験がある方へ。テニスラケットのスイングウェイトは、320前後が真ん中、350あたりで重め、300を切ると軽めとされています。パドルの数字が100台なのは、パドルがラケットより短くて軽いからです。パドルは軸の位置もそろっていないので、テニスの数字とそのまま比べることはできません。ラケットの好みからパドルを選ぶ考え方は、テニスラケット→パドル対応表にまとめています。

💡 よしコーチのポイント スイングウェイトが高いパドルは、振り出しは重いぶん、当たったときにボールを押し込む力が強く、相手の強打を受けても面が押されにくくなります。低いパドルは、ネット際の速い打ち合いで先に面を準備できます。パワーを取るか、手の速さを取るか。PickleballCentral のラボは、振り心地の数字の中でいちばん大事なのはスイングウェイトだとしています。コントロール系 vs パワー系の話ともつながっています。


ツイストウェイト:芯を外したときに「面がブレない」度合い

もうひとつの主役がツイストウェイトです。こちらは回す軸が違います。パドルをハンドルの線を軸にクルッとねじる向き、つまり縦軸(ハンドル軸)まわりの慣性モーメントです。

これが効いてくるのは、ボールを面の中心(芯)から外して当てたときです。芯を外すと、当たった側にパドルがねじられて面がブレます。ボールが面に触れているのは、強打で0.004秒ほど(Pickleball Science の計算)。その間に手首で面を直すことはできません。ねじれにどれだけ耐えられるかは、パドル自身の回しにくさ、つまりツイストウェイトで決まります。

  • ツイストウェイトが高い:芯を外しても面がねじれにくい。ミスヒットでも狙った方向に返りやすく、スイートスポットが広く感じる。いわゆる「寛容性(フォーギブネス)」です。
  • ツイストウェイトが低い:芯を外すと面がクルッと逃げて、球が弱くなったり、狙いからそれたりしやすい。スイートスポットが狭く感じる。

Pickleball Science の計算では、芯から約5cm外して強く打ったとき、同じシリーズの縦長のパドルは幅広のパドルより面が1.3度多く回り、相手のベースライン付近で球が約30cm高くなります。

ツイストウェイトの数字には、単位が書かれていないことがほとんどです。たとえば、あるメーカーの公式スペック表も「Swing Weight 113」「Twist Weight 6.6」と数字だけです。どちらも慣性モーメントですが、ツイストウェイトはスイングウェイトよりずっと小さな数字になります。ねじる軸(ハンドルの線)から面の端までは10cmほどなのに対し、振る軸から先端までは35cmほどあり、距離の2乗で効くからです。

目安は、パドルの形で大きく変わります。Pickleball.com の目安(2026年7月)の「中くらい」をまとめると、次のとおりです。

形 スイングウェイト(中くらい) ツイストウェイト(中くらい)
ワイドボディ 109〜111 6.9〜7.1
ハイブリッド 113〜116 6.4〜6.7
イーロンゲイティド 117〜119 6.0〜6.2

たとえばツイストウェイト6.5は、イーロンゲイティドなら「高い」、ワイドボディなら「低い」に入ります。数字は、同じ形のパドルどうしで比べてください。

💡 よしコーチのポイント 初中級のうちは、ツイストウェイトを重く見て選ぶのがおすすめです。毎回ど真ん中で捉えられる人はいません。Pickleball.com の解説も、芯で捉える確率がまだ安定しない時期は、パワーより寛容性を重視するよう勧めています。幅の広いパドルが寛容なのは、当てられる面が広いからだけでなく、ツイストウェイトが大きいからでもあります(Pickleball Science)。


慣性モーメント(Σmr²)と、鉛テープを貼る位置

スイングウェイトもツイストウェイトも、慣性モーメント(MOI)だと書いてきました。その中身を、ひとつの式で見てみます。

MOI = Σ m r²

日本語にすると、「それぞれの重さ(m)に、軸からの距離(r)の2乗を掛けて、全部足したもの」です。ポイントは、距離が2乗で効くこと。軸から2倍遠い場所に置いた重さは、MOIへの効き方が2×2=4倍になります。だから、同じ重さでも、どこに置くかで効き方が大きく変わります。

ここで、パドルの面を時計の文字盤に見立てて、鉛(またはタングステン)テープを貼る位置を考えてみます。PickleballCentral のラボが2023年に、イーロンゲイティドのパドル1本に鉛テープを合計0.4オンス(約11g)貼り、位置を変えて測った結果が次の表です。

貼る位置 スイングウェイト ツイストウェイト 何が変わるか
貼る前 86.8 6.1 (基準)
上の角(10時・2時あたり) 94.3(+7.5) 6.7(+0.6) 振り抜きが重くなり、パワーが出やすい
左右の縁(3時・9時) 90.3(+3.5) 6.9(+0.8) ねじれにくさがいちばん上がる。振り抜きも重くなる
スロートと下の角 87.9(+1.1) 6.7(+0.6) 振り抜きをほとんど重くせずに、ねじれにくさを足せる

鉛テープ合計約11gを貼る位置を変えたときの、スイングウェイトとツイストウェイトの変化を示した図解。貼る前はスイングウェイト86.8、ツイストウェイト6.1。上の角に貼るとスイングウェイトがいちばん増え(+7.5)、左右の縁(3時・9時)ではツイストウェイトがいちばん増え(+0.8)、スロートと下の角ではスイングウェイトが+1.1にとどまり、ツイストウェイトが+0.6増えた。2023年に1本のパドルで測った例で、目盛りは資料ごとに違う

上の角は振る軸から遠いので、スイングウェイトがいちばん上がります。左右の縁はハンドルの線から遠いので、ツイストウェイトがいちばん上がります。スロート寄りは振る軸に近いので、スイングウェイトはほとんど変わりません。同じ重さでも、軸からの距離で効き方が変わる。Σmr² の r² が効いているところです。

パドルの外周を囲むエッジガードも、軸から遠いところにある重さです。縁をなくした設計の狙いはエッジレスパドルの空力で解説しています。

公式ルール(USA Pickleball 2026年版)でも、市販のパドルに鉛テープを足すことは認められています(3.D.6)。ただし打球面に貼るテープは、外側の縁(エッジガード)から内側へ0.5インチ(約1.27cm)まで、グリップの上端から1インチ(約2.54cm)までに収める決まりです(3.D.7)。大会に出る方は、貼る場所に気をつけてください。

なお、手元に重さを足しても、スイングウェイトが下がるわけではありません。重心が手元に寄るので、軽く振れるように感じる人はいます。表の数字は、この1本を2023年の測定機で測った値です。前の節の Pickleball.com の目安とは目盛りが違うので、並べて比べないでください。実際の貼り方の手順は鉛テープでのパドルカスタム実践ガイドにまとめているので、手を動かしたい方はそちらへ。


実務:あなたはどっちを上げるべきか

ここからは、自分のパドル選びにどう使うかです。

パワーで押したい人・後ろから展開したい人は、スイングウェイト高めが武器になります。振り出しの重さと引き換えに、ドライブやスマッシュに勢いが乗ります。ただし取り回しは重くなるので、速い打ち合いで振り遅れないだけの準備は必要です。

速い手の攻防が好きな人・ネット前で打ち合いたい人は、スイングウェイト低めが有利です。ネット前の速い打ち合いで、先に面を準備できます(ボレーの基本はボレーの基本にまとめています)。ただし、軽く振れるほど腕にやさしいとは限りません。Pickleball.com は、スイングウェイトがとても低いパドルは、ボールとの衝突を受け止める重さが少ないぶん、腕に衝撃が伝わりやすいと注意しています。肘に不安がある方は、低すぎない「中くらい」を目安にしてください。

いまのパドルのまま振り抜きを軽くしたいときは、グリップを少し短く持つ方法があります。Pickleball Science の計算では、平均的なパドルを1インチ(約2.5cm)上で握るだけで、スイングウェイトが約20%下がります。

そして、芯を外すことがある人(ほぼ全員です)は、ツイストウェイトの高さが安心材料になります。芯を外しても、球が狙った方向へ返りやすくなります。

形による傾向も、知っておくと選びやすくなります。

  • イーロンゲイティド型(縦長):重さが手から遠いところまであるので、スイングウェイトは高め、ツイストウェイトは低めに出やすい形です。リーチとパワーが魅力で、芯を外したときのブレは大きくなりがちです。
  • ワイドボディ型(幅広):重さが手に近く、左右に広がっているので、スイングウェイトは低め、ツイストウェイトは高めに出やすい形です。取り回しと寛容性が持ち味です。

ワイドボディ・ハイブリッド・イーロンゲイティドの3つの形を並べた図解。幅の広い形ほど当てやすさと手の速さ、縦に長い形ほどリーチとパワーに寄り、ハイブリッドはその中間

中身の設計しだいで例外はあるので、最後は数字と実物で確かめてください。形ごとの特徴はパドルの形状ガイドに、コア厚の話は14mm vs 16mmに、中身の素材はフォームコア徹底解剖にまとめています。


まとめ:スケールの数字の「向こう側」を見よう

パドルを選ぶときは、重さ(オンス)だけでなく、重さがどこにあるかも見てください。振り心地を大きく左右するのは、スイングウェイトとツイストウェイトです。どちらも慣性モーメントで、回す軸が違うだけです。

試打のときは、「先端が重く感じるか」「芯を外しても面が逃げないか」の2つを意識してみてください。この記事の2つの数字が、手の感覚とつながってきます。

まずは静的重量の基礎から、という方はパドル重量完全ガイドへ。自分に合う1本の選び方の全体像はパドルの選び方 完全ガイドに、鉛テープで振り心地を変える手順はパドルカスタム実践ガイドにまとめています。

当店の商品ページでは、Six Zero と Selkirk(どちらも正規代理店)の一部のパドルに、メーカーが公表しているスイングウェイトやツイストウェイトを載せています。測り方はメーカーごとに違うので、同じブランドの中で比べる目安にしてください。スケールの数字の向こう側まで知ると、パドル選びはもっと面白くなります。

「自分のパドルはどこに鉛テープを貼ればいい?」「この2本、振ったときに軽いのはどっち?」といった疑問は、LINEで僕(よしコーチ)に気軽に聞いてください。友だち追加は、ピックルボール・ラボ公式LINEからどうぞ。画面右下の緑の「LINE 公式」ボタンからも追加できます。


関連商品

貼る位置を変えながら振り心地を試せる鉛テープは、当店でも扱っています。

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関連記事


References

  1. Pickleball Science — What do the Swing Weight Numbers Mean?(2024年8月・定義・単位・軸の位置で数字が変わる)
  2. Pickleball Science — How Does Twist Weight Affect Accuracy?(2024年1月・ツイストウェイトの定義と、芯を外したときの面の回転)
  3. Pickleball.com — Understanding swing weight and twist weight by paddle shape(2026年7月・形ごとの数字の目安)
  4. PickleballCentral — The Lab: Why Swingweight, Twistweight, and Balance Points Matter(2023年8月)
  5. PickleballCentral — Lab Breakdown: Ultimate Guide to Using Weighted Tape(2023年9月・鉛テープの位置別の測定)
  6. Selkirk — What is moment of inertia in pickleball and why it matters for your game(2025年8月)
  7. USA Pickleball — 2026 Official Rulebook(3.D.3 重さ/3.D.6 鉛テープ/3.D.7 テープを貼れる範囲)
  8. Tennis.com — Pro Shop: What can swingweight tell me about my frame?(2017年・テニスのスイングウェイト)
よ
Author
よしコーチ / Pickleball Lab 代表
元スキー世界大会出場選手・現役テニスコーチ。2026年LAでピックルボールと出会い、国内外100本以上のパドルを試打。Engage Pickleball唯一の日本正規代理店(2026年5月時点)。
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