ピックルボールの公式球戦争|ボールの作り・規格・割れる理由
ピックルボールのボールは、どれも同じに見えます。でも、大会やプロツアーごとに「公式球」は違います。PPAツアーとMLPはLife TimeのLT Pro 48、USA Pickleballの全米選手権はFranklin X-40。PPAツアーの公式球は、2024年と2025年に続けて替わりました。
よしコーチです。テニス歴15年、2026年にピックルボールに出会いました。この記事では、ボールの作り・規格・寒い日に割れる理由を見たうえで、プロツアーの公式球の勢力図を整理します。ボールの選び方を先に知りたい方は、入門編のボール完全ガイドからどうぞ。
屋外用と屋内用|穴の数と硬さの違い
ピックルボールの穴の数は、屋外用が40個前後(小さめ)、屋内用が26個前後(大きめ)が基本です。USA Pickleballの規格では、穴は26〜40個と決まっています(48穴のボールについては、後の公式球の話で触れます)。
USA Pickleballのルールブックにも、穴の小さいボールは屋外、穴の大きいボールは屋内で使うのが一般的、と書かれています(図3-2)。穴が小さく多いボールは、風の中でも軌道がぶれにくいとされています。風のない屋内では、穴が大きく少ないボールでも狙ったところに運べます。なお、ルールの上では、承認されたボールは屋内でも屋外でも使えます(3.C.1)。
もう一つの違いは硬さです。屋外用は硬めのプラスチックで、アスファルトやコンクリートのコートでもすり減りにくく、よく弾みます。屋内用は柔らかめで、体育館の床でコントロールしやすい打感です。屋外用は速く、屋内用はゆっくりで当たりが柔らかい、という打ち比べたときの違いの多くは、この硬さから来ています。
継ぎ目のある球、ない球|作り方の違い
同じ屋外用のボールでも、作り方は大きく2つに分かれます。
- 1ピース(回転成形):型の中に材料を入れ、型を回しながら加熱して、継ぎ目のない1つの球に成形します。穴はあとから機械で開けます。OnixはDura Fast 40を、継ぎ目のない一体の球に穴を機械加工したボールだと説明しています。米国の大手販売店Pickleball Centralは、Franklin X-40とSelkirk Pro S1もこの1ピースだとしています
- 2ピース(射出成形):半球を2つ作ってつなぎ合わせる(溶着する)ので、合わせ目に沿って継ぎ目が一周残ります。Pickleball Centralは、PPAツアーとMLPの公式球LT Pro 48を、この2ピースのボールとしています

継ぎ目があること自体は、規則の上で問題ありません。USA Pickleballのルールブックは、継ぎ目のわずかな段差を、飛び方に大きく影響しない範囲で認めています(3.C.5)。ボールのつぶれにくさを調べる試験も、継ぎ目のある球は「継ぎ目に垂直」と「継ぎ目に平行」の2方向で押して測る決まりです。規格そのものが、継ぎ目のあるボールも想定して作られています。
💡 よしコーチのポイント Pickleball Centralは、1ピースは継ぎ目がなくまっすぐ飛びやすく、2ピースは打感が柔らかめになりやすい、と説明しています。それでも、PPAツアーとMLPがいま使っているのは、2ピースで穴の縁を面取りしたLT Pro 48です。継ぎ目がないほうが常に上、とは言えないと僕は思います。同じ40穴前後の屋外用でも打った感じが違うのは、作り方に加えて、硬さや穴の配置が少しずつ違うからだと考えるのが自然です。
公認球の規格と、寒い日に割れやすい理由
USA Pickleballの公認球、つまり承認球リストに載るボールになるには、規格に合っている必要があります。細かい数字はルールブックではなく、用具の規格書(Equipment Standards Manual、2025年1月の第3版)に書かれています。
| 項目 | 規格 |
|---|---|
| 直径 | 7.29〜7.54cm(2.87〜2.97インチ)。真円からのずれは±0.51mm以内 |
| 重さ | 22.1〜26.5g(0.78〜0.935オンス) |
| 弾み | 198.1cmの高さから花崗岩の板に落として、76.2〜86.4cm跳ね返る。気温21℃前後で測る |
| つぶれにくさ | 決まった方法で押したときの力が、平均43ポンド重(約19.5kg重)未満 |
| 穴 | 円い穴が26〜40個 |
| 表示 | ボールにメーカー名かロゴ。大会向けのボールはパッケージに「USA Pickleball Approved」 |
硬さ(デュロメーターDで40〜50)も規格書に載っていますが、いまは参考として記録するだけで、合否の条件ではありません。
弾みの試験に「気温21℃前後」という条件が付いているのは、ボールの性質が温度で変わるからです。Selkirkは、プラスチックは冷えると縮んでもろくなるので、寒い日はボールが割れやすくなり、強く打つ人ほど割れやすいと説明しています。冷えたボールは硬くなるぶん、球足も速くなります。Pickleball Centralは、硬い屋外用のボールは華氏40度(約4℃)前後を下回ると割れやすいとしていますが、割れやすくなる気温の目安は資料によって違います。
割れ方について、Life Timeは、これまでのボールの割れは主に穴の縁から始まると説明していて、LT Pro 48では穴の縁を面取りしています。

柔らかい屋内用は割れにくい代わりに、だんだん柔らかくなって反発が落ちる形で寿命がくると言われます。どちらも消耗品です。交換のサインはボール完全ガイドの「ボールの寿命と交換タイミング」にまとめています。
ピックルボールの公式球は、なぜツアーごとに違うのか
ピックルボールには、全員が使う唯一の公式球がありません。大会や団体ごとに、使う球が違います。2026年10月時点では、こう分かれています。
| 大会・団体 | 公式球(2026年10月時点) |
|---|---|
| PPAツアー | Life Time「LT Pro 48」(2025年8月から) |
| MLP | Life Time「LT Pro 48」(2026年シーズンから) |
| PPAツアー・アジア | Life Time「LT Pro 48」(2026年8月に発表。それまではJOOLA HC-40) |
| USA Pickleball 全米選手権 | Franklin X-40(2026年大会の使用球) |
| 全米オープン | Franklin(2016年から公式球) |
| APPツアー | Franklin X-40(2024年3月から。複数年の契約) |

PPAツアーの公式球は、2023年までOnixのDura Fast 40でした。2024年1月にVulcanのVPRO Flightへ替わり、MLPも2024年7月から同じ球を使いました。このVulcanの球には、真円が早く崩れて弾み方が安定しないと、多くのプロが不満を口にしていたとThe Dinkは伝えています。そして2025年8月、PPAツアーはLife Timeが開発したLT Pro 48に切り替え、MLPも2026年シーズンから同じ球になりました。
Life Timeは、米国とカナダでフィットネスクラブを約200か所運営する会社です。PPAツアーやMLPの大会の会場になってきたほか、PPAツアーの公式パートナーでもあります。
📝 公式球と公認球は別の話 「公式球」は、大会や団体がスポンサー契約などで選んだボールです。「公認球」は、USA Pickleballの規格に合うと認められ、承認球リストに載ったボールです。Franklin X-40は両方に当てはまります。一方、PPAツアーとMLPのLT Pro 48は穴が48個で、USA Pickleballの規格(26〜40個)の外にあり、承認球リストにも載っていません(2026年10月24日に確認)。PPAツアーとMLPは、USA Pickleballの承認球リストに載っているかどうかとは別に、自分たちで選んだ球を使っています。
なぜ統一されないのでしょうか。1つは、公式球がスポンサー契約で決まることです。たとえばAPPとFranklinの契約には、会場の看板や展示、SNS、中継での露出が含まれています。もう1つは、ボールによって速さや弾み方、割れにくさが違い、プレーする場所や求めるものによって合うボールが変わることです。ボールが替わるたびに選手から賛否の声が上がるのも、この違いが大きいからだと思います。
日本でボールを選ぶなら
大会に出るなら、まず大会要項の指定球を確かめてください。指定がなければ、USA Pickleballの承認球リストに載っているボールを選ぶと安心です。公認球には、パッケージに「USA Pickleball Approved」の表示があります。屋外のコートなら40穴前後の屋外用、体育館なら26穴前後の屋内用が基本です。当店で扱っている屋外用・屋内用のボールは、ボールの一覧にまとめています。
寒い時期に屋外でプレーするなら、予備のボールを多めに持っていきましょう。Selkirkは、予備をポケットに入れて体温で温めておき、ゲームごとに入れ替える方法を紹介しています。ラリーの途中でボールが割れても、ラリーは最後まで続けます。全員が「割れたボールが結果に影響した」と認めれば、そのラリーはやり直しです(ルールブック10.G)。屋外コートでの注意点は風対策と屋外コートの注意点にまとめています。
住宅の近くなら、静かなボールという選択肢
打球音は、近隣トラブルの火種になります(騒音問題と対策)。USA Pickleballは2023年9月に「静音カテゴリー」を作り、同じ年の11月にOWL Sportのパドルを第1号として認定しました。対象はパドルだけでなく、ボールも含まれています。2026年10月時点では、静音カテゴリーのリストにボールが4種類載っていて、そのうちSelkirkのQ1 Quiet Ballは、2026年1月にUSA Pickleballの承認球リストにも加わりました。フォームのボールのように、打ち味や弾み方が大きく変わるものもあるので、大会やその練習には大会の指定球を使い、住宅の近くでは静かなボールを試す、という使い分けが現実的です。
まとめ
- 屋外用は穴が小さく多く(40個前後)硬め、屋内用は穴が大きく少なく(26個前後)柔らかめ。USA Pickleballの規格では、穴は26〜40個
- 作り方は、継ぎ目のない1ピースと、半球をつなぎ合わせる2ピース。継ぎ目は規則で認められていて、どちらが上とは決まっていない
- 硬さはいまは合否の条件ではなく、直径・重さ・弾み・つぶれにくさ・穴の数で公認が決まる。寒い日は割れやすいので、予備を多めに
- 2026年10月時点の公式球は、PPAツアーとMLPがLT Pro 48、全米選手権とAPPツアーがFranklin X-40(全米オープンもFranklin)。LT Pro 48はUSA Pickleballの承認球リストには載っていない
公式球が大会ごとに違うのは、ピックルボールがまだルールも用具も動いている途中のスポーツだからだと僕は思います。パドルの中身の話は、フォームコア徹底解剖と、パドルの反発の規格をまとめたPBCoRの解説もどうぞ。
「屋外用と屋内用、どちらを買えばいい?」「寒い時期の予備はどのくらい持っていけばいい?」といった相談は、LINEで僕(よしコーチ)に気軽に聞いてください。友だち追加は、ピックルボール・ラボ公式LINEからどうぞ。画面右下の緑の「LINE 公式」ボタンからも追加できます。
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- ピックルボール観戦ガイド|日本からプロの試合を見る方法 — LT Pro 48を使うプロの試合を見る
- 室内ピックルボール完全ガイド|雨の日・冬でもできる室内コートの探し方と屋外との違い — 体育館でのプレーと屋内用ボール
References
- USA Pickleball — 2026 Official Rulebook(3.C ボール/図3-2/10.G 割れたボール)
- USA Pickleball — Equipment Standards Manual(Revision 3.0・2025年1月。2.D ボールの直径・重さ・弾み・つぶれにくさ・硬さ・穴の数)
- USA Pickleball — Approved Ball List(承認球リスト・2026年10月24日確認)
- USA Pickleball — Quiet Category Equipment(静音カテゴリーの認定品リスト)
- USA Pickleball — USA Pickleball Announces Quiet Category for Pickleball Products(2023年9月25日・パドル・ボール・カバー・遮音スクリーンが対象)
- USA Pickleball — USA Pickleball Announces its First Certified Quiet Product - The OWL by OWL Sport(2023年11月14日)
- PPA Tour — LT Pro 48 Pickleball Named Official Ball of Carvana PPA Tour(2025年8月1日)
- Life Time — Life Time's LT Pro 48 Pickleball Named Official Ball of Major League Pickleball(2026年4月29日)
- Pickleball.com — PPA Tour Asia announces LT Pro 48 as official ball(2026年8月25日)
- Experience Life(Life Time)— 5 Fun Facts About the Pickleball From Life Time(48穴・穴の縁の面取り)
- Major League Pickleball — Major League Pickleball Announces Vulcan as League's Official Ball(2024年7月23日)
- The Dink Pickleball — Vulcan Named Official Ball of Major League Pickleball(2024年7月24日・選手の反応)
- Pickleball.com — Why is there no universal ball for pickleball?(2024年1月4日・PPA が Dura から Vulcan へ)
- Onix — Onix Signs New Two-Year Extension with the PPA(Dura Fast 40 は2023年まで PPA の公式球)
- APP — Franklin X-40 Named Official Ball Of APP Tour(2024年3月19日)
- USA Pickleball National Championships — Amateur(2026年大会の使用球)
- NSGA — Franklin Sponsors US Open Pickleball Championships(2026年3月2日・2016年から公式球)
- Pickleball Central — Best Pickleball Balls of 2026(2026年10月・1ピースと2ピース、寒さと割れ)
- Selkirk — How temperature affects a pickleball(2026年10月6日)
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