上達のコツ

ピックルボールのATPとアーン完全ガイド|ネットの外側を使う2大ショットの打ち方とルール【コーチ解説】

よ
よしコーチ
Pickleball Lab 代表
読了 約13分
8019字
ピックルボールのATPとアーン完全ガイド|ネットの外側を使う2大ショットの打ち方とルール【コーチ解説】

プロの試合の映像を見ていて、いちばん「今の何!?」と声が出るショットは何か。僕は迷わず2つ挙げます。ネットの横をすり抜けて回り込んでいく球(ATP)と、キッチンの脇から突然現れて叩き落とす球(アーン)です。

よしコーチです。テニス歴15年、2026年にピックルボールに出会いました。この2つ、動画で見ると完全に曲芸なんですが、どちらもルールブックにきちんと収まった合法ショットなんですね。しかもATPは、場面さえそろえば上級者でなくても打てます。打てることを知らないせいで、チャンスを見送っていることも多いと思います。この記事では、ATPとアーン——そして派生のバート——を、「なぜ合法なのか」から打ち方・練習の順番・使いどころまで一気に解説します。キッチンのルールに自信がない方は、先にキッチン完全ガイドをどうぞ。


ATP(アラウンド・ザ・ポスト)とは|ネットを越えなくていい

ATP=Around The Post。名前のとおり、ボールがネットの上ではなく、ネットポストの「外側」を回って相手コートに入るショットです。

初めて見ると「え、それ反則じゃないの?」と思いますよね。でも公式ルールには、「ボールはネットポストの外側を回して返球してよい」とはっきり書いてあります(2026年版 13.C: Ball Around Net Post)。禁止されていないどころか、明文で認められたショットなんですね。

そもそもルールが返球に求めているのは、ネットの上を越えることではなく、ボールが相手コートに入ることです(10.C)。そのうえで、

  • ネットより低い高さを通っても構いません。13.Cには高さの条件が付いていません(以前の版のルールブックでは「ネットより低くてもよい」と明記されていました)。ポストの横をかすめるように、低く入っていってもOKです
  • コートからの距離にも制限はありません。サイドラインのはるか外から打っても、ルール上は問題なし(打つ前に体やパドルがネット面を越えるとフォルトになる点は、アーンの章で説明します)
  • ただし通す場所は必ずポストの"外側"。ネットとポストの隙間を抜くのも、ネットの下をくぐらせるのもフォルトです(13.D/13.E)。低く通そうとして、内側に寄りすぎないよう注意してください

つまり、ネットの「横」には、ルール上ぽっかり空いた抜け道があるわけです。この空間の存在を知っているかどうかで、コート外に追い出されたときの選択肢がまるで変わります。

ATPが打てるのは「こういう場面」

ATPは、狙って打ちに行くショットではありません。相手が作ってくれた場面を、逃さず拾うショットです。具体的には、

相手のディンクやアングルショットが、あなたを横(サイドラインの外)へ大きく追い出したとき。

ネットポストは、公式の規格ではサイドラインより30センチほど外側に立てることになっています(ポストの内側どうしの間隔22フィートに対し、コート幅は20フィート。3.B.2)。ボールがそのポストよりさらに外を通れるくらい、横へ大きく流れていることがATPの前提です。

さらに条件を足すと、そのボールが、ネットの高さより低い位置まで落ちてきていること。ボールがまだ高いうちは、ふつうにネットの上を越して返せばいい場面です。ネットより低く落ちてきて、上を越して返すのが苦しくなったときこそ、ポストの外側という道が生きてきます。低く、外へ流れていく球——これがATPのサインです。

相手からすると、外へ追い出した時点で「このラリーはもらった」と感じやすい場面です。そこから思わぬ角度で返ってくるので、ATPは決まると盛り上がりますし、試合の流れを変えるきっかけにもなります。

ピックルボールのネットポスト周辺を拡大した俯瞰図。コートの外へ追い出された打点からポストの外側を回って相手コートへ入るATPの軌道を緑の点線で、ネットとポストの隙間を抜く反則例を赤い矢印で示した図解

ATPの打ち方|4ステップ

ステップ1:判断する 「外へ流れる」「ネットより低い」の2つがそろった瞬間に、ATPだと決める。迷ったまま走ると間に合いません。

ステップ2:ボールを追い越さない つまずきやすいのがここです。ボールと並走してしまうと、体が詰まって振れません。ボールの後ろ・外側に回り込んで、打点を体の前に置く。テニスの回り込みと同じ感覚です。

ステップ3:低く、面を寝かせすぎない ポストの横を通すので、山なりに上げる必要はありません。低い打点から、フラットに近い面でまっすぐ押し出す。ネットの上を越す必要がないぶん、テニスのパッシングショットに近い感覚で振れます。

ステップ4:ポストに当てない 最後の関門がここ。ネットポストはルール上「恒久物(パーマネント・オブジェクト)」の扱いで、ポータブルネットならポストにつながった脚や車輪も含まれます。相手コートにバウンドする前にボールがポストへ当たったら、打った側のフォルトです(10.C.4)。ポストのすぐ横を狙うのではなく、ポストからこぶし1つ〜2つ分の外側を通すつもりで打つと安全です。

補足すると、2025年版までは「ボールがネットポストに当たったらデッドボールとなり、打った側がラリーを失う」という条文(旧11.K)がありましたが、2026年版で書き換えられました(USA Pickleballは、意図をより明確にした変更と説明しています)。いまは、相手コートでバウンドしたあと、相手が返す前にスピンや風でボールがポストに当たった場合、返せなかった相手側のフォルト、つまり打った側がラリーを取ります(10.C.5)。ATPで狙って起こせる展開ではないので、実戦では「バウンド前にポストへ当てたら自分のフォルト」とだけ覚えておけば十分です。

💡 よしコーチのポイント ATPは、厳しいコースを欲張らないのがおすすめです。外から低く入ってくる球は、それだけで相手にとって取りにくい角度になっています。反対サイドの隅を狙ってアウトするより、まずは確実に相手コートへ収めることを優先したほうが、結果的に決まる確率は上がると思います。


アーン(Erne)とは|キッチンの「外側」から叩く

もう一つがアーン。キッチン(ノンボレーゾーン)の横、サイドラインの外側に立って、ネットのすぐ近くでボレーするショットです。名前は、このショットを試合で使って広めたErne Perryという選手に由来すると言われています。

なぜこれが強いのか。キッチンの中ではボレーができない。でも、キッチンの"外側"ならボレーできるからです。

コートを思い浮かべてください。キッチンはコートの幅いっぱいに広がっていますが、サイドラインの外側は、もうキッチンではありません。つまり、サイドラインの外に立てば、ネットのすぐ横で、ノーバウンドのボールを堂々と叩けるわけです。相手からすると、ディンクを打った次の瞬間に、真横から人が現れて叩き落としてくる。心臓に悪いショットです。

アーンの2つの入り方

アーンには、合法的な入り方が2通りあります。

(A)ジャンプする キッチンラインより後ろ(キッチンの外)から踏み切り、空中でキッチンの角(サイドラインの部分)を飛び越えて、両足ともサイドラインの外に着地する。空中で打つので、打つ瞬間はどこにも触れていません。派手なのはこちらです。踏み切る足がキッチン(ラインを含む)に触れていると、空中で打ってもフォルトになります(11.A.3)。

(B)歩いて回り込む ラリー中に、キッチンの外側(サイドラインの外)へあらかじめ移動して待ち構える。ジャンプ力は不要で、こちらのほうが実戦的です。相手が「あ、いない」と気づく前に打ち込みます。移動の途中でキッチンを踏んで横切った場合は、両足ともキッチンの外の地面に着いてからでないとボレーできません(11.A.3)。

アーンが合法になる3つの条件

派手な見た目のわりに、アーンの合法条件はシンプルです。

1. ボレーの前に両足をキッチンの外に着き、打つ瞬間も打ったあとも、キッチンに触れない ここは誤解が多いので正確に書きます。キッチンは「ネットから7フィート×コート幅20フィート」の長方形で、左右はサイドラインで終わりです(3.A.4.c)。つまりサイドラインの外側の地面は、もうキッチンではありません。キッチンの真横であっても、そこに立ってボレーするのは合法です。これがアーンの成立根拠そのものですね。

注意すべきなのは、キッチンを囲んでいる線そのもの。公式ルールは「ノンボレーゾーンを囲むラインは、すべてゾーンの一部」と定めています(3.A.4.c。キッチン完全ガイドでも詳しく書いています)。アーンで問題になるのは、サイドラインのうち、ネットからキッチンラインまでの部分。ここもキッチンの一部なので、少しでも踏んでいたらフォルトです。打ったあとの勢いでこの線やキッチンに触れても、モメンタムの反則になります(11.A.2)。ジャンプ型で気をつけたいのが、着地で片足がこの線の上に落ちるパターン。着地する場所を先に決めておくのがおすすめです。

2. ネットやポストに触れない 体・パドル・服のどこであれ、ボールが生きているうちにネットやポストに触れたらフォルトです(13.G)。ネット際ギリギリで振るので、起こりやすい反則です。

3. ネット面の「延長」を、打つ前に越えない これがアーンとATPに共通する、少し分かりにくいルールです。公式ルールは「ネット面(Plane of the Net)」を、ネットの上下だけでなく左右にも伸びる垂直な面と定義しています。そして、ボールを打つ前に、体やパドルがその面より相手側へ出てしまうとフォルト(13.I.1.a)。打ってからフォロースルーやその流れで越えるぶんには問題ありません(13.I.1)。「打つのが先、越えるのが後」と覚えてください。ただし、その流れで相手側へ回り込んだとしても、相手のコート(ラインを含む)に触れたらフォルトです(13.H)。

ボールの側にも同じ面が関わります。ボールがネット面を完全に越えて、自分の側に来てから打つのがルールです(13.F)。ネット際で待ち構えるアーンは、早く打ちに行きすぎないよう注意してください。

※ここで言う「延長」はネット面の話であって、さきほどのキッチンには延長がない(サイドラインで終わる)のとは別物です。ここが混ざると混乱するので、切り分けて覚えてください。

ピックルボールのアーンの立ち位置を示したコート図。サイドラインの外側の合法な立ち位置と、キッチンを囲むラインを踏んでしまう反則の位置を対比した図解

💡 よしコーチのポイント アーンで気をつけたいのが、「早く動きすぎて相手にバレる」こと。移動を始めた瞬間に気づかれたら、相手は空いた場所へ流すだけです。動き出すなら、相手がボールを打つ動作に入ってから。それより早いと、ただの隙になります。アーンは、技術と同じくらい、動き出すタイミングと、狙っていることを悟らせない落ち着きが大事なショットだと思います。


バート(Bert)|アーンの上級版

もう一つだけ、名前を知っておくと観戦が楽しくなるショットを紹介します。バート(Bert)です。名前の由来は、アメリカの子ども番組「セサミストリート」の名コンビ、バートとアーニー(Bert & Ernie)だと言われています。アーン(Erne)を番組のアーニー(Ernie)に見立てて、その相棒の名前を付けた、という言葉遊びですね。

これは、自分のパートナーの前を横切って、反対側のサイドでアーンを打つというもの。つまり、右側にいた人が、左側の相方の前を横切って、左サイドの外側からアーンを決める。合法条件はアーンとまったく同じです。

当然、リスクは跳ね上がります。相方の前を横切るので、外したら自分が守っていたサイドががら空きになりますし、相方とぶつかる危険もあります。決まれば大きな見せ場になりますが、外せば一気に不利になる、ハイリスクな一手です。観戦中に見かけたら、その思い切りの良さに注目してみてください。空いたサイドがなぜそれほど痛いのかは、ダブルスの陣形・ポジショニングを読むとピンとくると思います。


練習の順番|ATPから始めるのがおすすめ

ATPとアーン、練習するならATPから始めるのがおすすめです。理由は3つあります。

  1. 足の位置を気にする場面が少ない。ATPはふつう、バウンドした球をコートの外で打つので、キッチンのルールが関わることがほとんどありません(打球前にネット面を越えないという一点だけは共通です)
  2. 失うものが少ない。ATPは、すでに外へ追い出されて苦しい場面で選ぶショットです。一方アーンは、互角のラリーから自分で動いて仕掛けるので、読まれると、そのラリーをこちらから手放しやすくなります
  3. テニス経験者なら、動きの土台がすでにある。回り込んで振り抜く動作は、そのまま流用できます

ATPの練習ドリル

相手(または球出し役)に、コートの外へ大きく流れる低いアングルボールを、繰り返し出してもらいます。あなたは外へ走って、ポストの外側を通す。最初はなかなか入らなくて当たり前です。ポイントは、入れることより「打点を体の前に置く」ことに集中すること。打点さえ整えば、コースは後からついてきます。

一人で練習するなら、ネットの自分側で、ポストよりもサイドラインから外へ離れた位置に立ち、自分でボールを落として打つ(セルフフィード)形で、ポストの外側を回して相手コートへ入れる軌道だけを反復するのも一つの方法です。一人でできる練習メニュー全般は一人でもできる練習メニューにまとめてあります。

アーンの練習ドリル

アーンは、打つ練習の前に「移動して、止まって、足の位置を確認する」だけの練習から始めてください。ボールは打ちません。キッチンの外側に立ち、自分の両足がキッチンを囲むライン(サイドラインのうちキッチンの横の部分を含む)に触れていないことを目視で確認する。これを20回。足の位置が体に入る前にボールを打ち始めると、フォルトの癖がつきます。

フットワークそのものを鍛えたい場合はピックルボールのフットワークもあわせてどうぞ。

💡 よしコーチのポイント ATPドリルは、最初はゆっくり外へ流れる球から始めるのがおすすめです。ATPは間に合わなければ打てないショットなので、まずは「外へ走る→ボールの後ろに入る→ポストの外を通す」という流れを、余裕のある球で体に覚えさせる。球出しのスピードを上げるのは、その流れが崩れなくなってからで十分です。


いつ使う?|そして、いつ使わないほうがいいか

使いどころは、次のように分けて考えるのがおすすめです。

ATPは、場面が来たら迷わず選んでいい。 外へ追い出された時点で、どうせ苦しい返球しかできない場面だからです。そこで「ATPという選択肢がある」と知っているだけで、追い出された場面が反撃の場面に変わります。ただし、サイドの外に走り込めるだけのスペースがあることが前提です。体育館などで隣のコートとの間隔が狭い場所では、ポストや壁、隣のコートのプレーヤーにぶつかる危険があるので、無理に外へ走らないでください。練習でも同じです。

アーンは、ディンクの打ち合いが続くようになってからでいい。 アーンのチャンスは、キッチン際のディンク戦の中で、相手のディンクがこちらのサイドライン際(キッチンの角のあたり)に来る場面で生まれます。ディンクのラリーがまだ続かない段階で無理に狙うと、ポジションを崩して自滅しやすい。まずはディンク戦5つの基本でキッチン際の駆け引きを固め、「相手のディンクがどこに来るか読める」ようになってからが、アーンの出番です。攻めに転じる判断そのものはスピードアップの基本で扱っています。

派手なショットは、地味な土台の上にしか乗りません。順番を守るほうが、結果的に早く打てるようになると思います。


まとめ

  • ATP(アラウンド・ザ・ポスト)は、ネットポストの外側を回して入れる合法ショット。公式ルール13.Cで明文化されている
  • ATPのチャンスは「外へ流れる」「ネットより低い」の2条件がそろったとき
  • 通す場所はポストの外側。隙間もネットの下もNG。バウンド前にポストへ当てたら自分のフォルトなので、こぶし1〜2個分外を狙う
  • アーンは、キッチンの"外側"に立ってボレーする合法ショット。キッチンはサイドラインで終わるので、その外はキッチンではない
  • アーンの合法条件は3つ。ボレーの前に両足をキッチンの外に着き、打つときも打ったあともキッチン(囲む線を含む)に触れない/ネット・ポストに触れない/打つ前にネット面を越えない
  • 練習はATPが先、アーンが後。アーンはディンク戦の土台ができてから

僕が思うに、この2つのショットの本当の価値は「決まること」ではありません。「コートの外にも、ネットの横にも、道はある」と知ることです。追い出されて終わりだと思っていた場面に選択肢が生まれる。その発想の広がりが、そのままプレーの余裕になります。次の試合で、外へ振られたら——ぜひ一度、ポストの横を見てみてください。

「この場面でATPは狙えますか?」といった具体的な相談は、LINEで気軽にどうぞ。僕(よしコーチ)が状況に沿ってお答えします。友だち追加はピックルボール・ラボ公式LINEからどうぞ。


関連記事

関連商品

すべてのパドルを見る →


References

  1. USA Pickleball Official Rulebook 2026(Section 2: Definitions / Section 3: Court and Equipment / Section 10: Rally Situations / Section 11: Non-Volley Zone Infractions / Section 13: The Net and Net Support System During Play)
  2. USA Pickleball — 2026 Rulebook Change Document(Entry 2070 Net Post Winner:旧11.K→10.C.5)
  3. PlayPickleball — USA Pickleball: Pickleball Around-the-Post (ATP) shot(USAP審判による解説。条番号は2024年版)
  4. Pickleheads — Pickleball kitchen rules(キッチンはサイドラインで終わる)
  5. Pickleheads — Erne in pickleball(アーンの名前の由来・バートの定義。条番号は旧版)
よ
Author
よしコーチ / Pickleball Lab 代表
元スキー世界大会出場選手・現役テニスコーチ。2026年LAでピックルボールと出会い、国内外100本以上のパドルを試打。Engage Pickleball唯一の日本正規代理店(2026年5月時点)。
よしコーチについて →
Free Consultation
パドル選びで迷ったらLINEで相談

ブログを読んでも「自分にはどれが合う?」と迷うことはよくあります。よしコーチが直接お答えします。

LINE で無料相談